晴耕雨読の日々 「いい定年後ね」と食堂のおばさん雪原遊覧ガイドの野沢日記

2012/9/8

定年世代 奮闘記

ソバ畑でトラクターに乗っている高橋三男さんに、この夏、会った。彼は農事組合法人・野沢農産の三男で、手広く水田の耕作を請け負っている。野沢を中心にその面積は70ヘクタールに及ぶ。冬はスキー場の圧雪車オペレーターだ。雪原遊覧でペアを組む相方の一人でもある。

相方らの宴会に仲間入り、豪快さに飲み込まれる

雪原遊覧では筆者とぺアを組む高橋三男さん。シーズンオフは農事組合法人「野沢農産」で働く

野沢温泉スキー場にはゲレンデを整備する圧雪車が23台と雪上車2台、運転手のオペレーターが24人いる。彼らは4班に分かれ、1週間交代で持ち場を移動していく。仕事の時間帯はおもに夜明け前で、スキー場の営業が始まる前に終了。上ノ平を担当する班が雪原遊覧の雪上車を運転する。

スキーシーズンが終わった4月1日夜、オペレーターたちのお別れ大宴会が村内の民宿であり、私も初めて仲間に加えてもらった。

野沢温泉の大湯通り(スケッチは筆者)

ひと冬の喜怒哀楽をまるごとコップ酒で流し込むかのような豪快な飲みぶり。一升瓶を股にはさんで放さない猛者もおり、私も久しぶりに泥酔した。

彼らの夏の仕事は大半が農業だ。家が農家の人もいれば、隣の飯山市などで農業法人をつくり請負耕作をする人もいる。トラクターやコンバインなど大型農機の運転ならお手のものだ。本職が大工さんや建具職人、植木職人といった人もいて、“二毛作生活”がすっかり定着している。

雪原遊覧の受付をしている「レストハウス湯の峰」の従業員とも毎日顔を合わせている。食堂の端っこのテーブル席が私の待機場所だ。荒れ模様の日でお客さんが来ないときは、コーヒーを飲みながら降る雪をぼんやりながめている。従業員のおばさんたちから「いい定年後ね」と声をかけられる。

冬の野沢に集う人模様、知れば知るほど興味深い

野沢温泉スキー場では直営レストランとカフェが4店あり、こうした店の従業員の懇親会にも毎年、顔を出している。地元の年配者もいるが、大半がスキー場に働き口を求めてやってきた都会の若者たちだ。この季節、スキーやスノーボード好きの男と女が出会う、恋のハイシーズンでもある。

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毎日の夕飯、湯桶を持ったまま村のレストランに直行