雪山マナー巡り、女性と飲み屋で口論雪原遊覧ガイドの野沢日記

2012/9/1

定年世代 奮闘記

シュプールのない新雪を滑りたい――。そんなパウダースノーを求めるスキーヤーやボーダーは少なくない。ただ、赤いロープの規制線を越えてのコース外滑走はルール違反であり、遭難事故にもつながる。野沢温泉スキー場では2012年シーズン、ゲレンデ外での遭難騒ぎが相次いだ。

事故伝えるテレビニュースに「おやっ」

野沢温泉スキー場のパトロール(1月)

 正月休みの2日、東京と埼玉の中年ボーダー3人が帰ってこない、と仲間から捜索願が出された。救助隊が捜索したが見つからず、翌朝、木島平方面に下山中の3人を長野県警のヘリが発見した。毛無山のコース外を滑っていた3人は吹雪で下山方向を間違い、雪洞を掘って一夜を明かした。

雪原遊覧ガイドであっても、スキー場で働く一員として、遭難騒ぎに無関心ではいられない。この事故を伝えた3日朝のテレビニュースに、おやっと思った。「大雪注意報が出ていたのにスキー場は営業を続けていた」というくだりがあったからだ。「吹雪で道を間違え」という表現もあった。

スキー場社長の河野博明さんから「いまのニュース、変ですよね」と元記者の私に電話があった。大雪注意報ぐらいで営業を中止していたら全国のスキー場はどこも商売にならないだろうし、もともと雪原に道などついていない。2人の意見が一致し、社長が放送局に抗議と訂正を申し入れた。

やまびこゲレンデのコース外滑走禁止の看板(1月)

私も現役時代に何度か新聞に訂正記事を書き、“おわび”まで出した苦い経験がある。長年、取材する側にいた者が、定年で立場が変わると、ニュースの見方も違ってくるものだ。抗議のてん末はともかく、夜のニュース番組では、遭難の原因から救助の費用をめぐる問題に焦点が移っていた。

野沢温泉村では全国に先駆けスキー場安全条例を施行(2010年12月)、コース外での遭難者に救助費用を請求する制度を設けている。ニュース特集でこの条例がクローズアップされ、全国に知れわたった。インタビューを受けた河野社長は「心に赤いロープを」とテレビ画面で訴えた。

子の安否気遣う肉親の表情、心痛む

“禍転じて福となす”のはずだったが、遭難騒ぎはその後もあとを絶たず、スキー場ゲレンデ課によると、3月末までに17件33人にのぼった。さいわい死亡者はゼロだったが、人数的には遭難者の3分の1を外国人が占めた。その大半はオーストラリア人で、米国、カナダ、ギリシャ人もいた。

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