女子のブームはマンガから 近未来の趣味のトレンドを大胆予測
日経エンタテインメント!
これまではおじさんの趣味の領域と考えられてきたものに、若い女性が夢中になってブームとなる――。そんな現象が最近、増えている。歴史大好きの「歴女」、鉄道趣味の「鉄子」、おしゃれな格好で登山に励む「山ガール」…。このような呼称も今ではすっかり定着した。
こうした女子ブームの背景には、マンガやアニメ、ゲームの影響があることが少なくない。例えば、女子の鉄道趣味が"解禁"された背景には、菊池直恵のノンフィクションマンガ『鉄子の旅』(「週刊ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI」などで2002年~2006年まで連載)があった。
では、次なる「女子ブーム」のキッカケになりそうなマンガ作品をチェックしてみよう。
まずは落語。この数年の落語ブームは女性人気が支えており、立川志の輔や春風亭昇太など人気落語家の公演は、女性客が半数を占めるようになっている。2007~2008年のNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」以降、落語家を目指す女性入門者も増えている。
その勢いをさらに後押ししそうな作品が『じょしらく』(別冊少年マガジンで2009年から連載中)だ。原作はコメディーマンガ『さよなら絶望先生』の久米田康治。落語マンガという体裁をとってはいるが、その内容は女子落語家たちの舞台裏でのガールズトークが中心だ。この構造は女子高生バンドブームを作った『けいおん!』と一緒。
『じょしらく』も『けいおん!』と同様にアニメ化された。そのエンディング曲を歌っていたのは、桃黒亭一門を名乗るアイドルグループの「ももいろクローバーZ」だった。
将棋と農業を描く人気作家
落語と同様におじさんの趣味とみなされがちだった将棋だが、マンガの世界では既に人気のジャンルに。『ハチワンダイバー』や『ひらけ駒!』など、将棋を題材とした多くの作品が現在も連載中だ。なかでも女子人気を開拓しているのが『3月のライオン』(「ヤングアニマル」で2007年から連載中)。作者が、大ヒットマンガ『ハチミツとクローバー』の羽海野チカというのがポイントだ。
将棋に打ち込む若手棋士たちが魅力的に描かれており、羽生善治三冠など実際の棋士を思わせるキャラクターも登場する。自分では指さずにプロのタイトル戦を観戦したりその勝敗をチェックしたりする、近年増加中の「観る将棋ファン」に女性が参入するきっかけにもなりそうだ。
麻雀も男性イメージが強かったが、最近はネット対戦などでファン層は広がっている。『咲-Saki-』(「ヤングガンガン」で2006年から連載中)は女子高生たちが主人公という異色の麻雀マンガ。麻雀インターハイがテレビ中継されるという一歩先行くマンガ世界に現実が追いつくのは、5年後か、10年後か?
女子人気に期待しているのはエンターテインメント分野だけではない。学生の就業先などとして農業ブームという言葉が使われるようになっているが、その流れを後押ししているのが『銀の匙 Silver Spoon』(「週刊少年サンデー」で2011年から連載中)だ。作者は大ヒットマンガ『鋼の錬金術師』の荒川弘。農業高校を舞台に、農業や畜産、食についてしっかりと描いた作品だ。ちなみに荒川弘は女性である。自身が農業高校出身で、実家で就農していた経験を作品に生かしており、女性読者の共感を得ている。マンガ大賞を受賞し、その影響力は増すばかりだ。
大学では農学部は理工系の中では比較的女性が多いが、理学部数学科となると女性は圧倒的に少数派。そんな超マイナー女子たちを主人公にしたのが『数学女子』(「まんがくらぶ」で2010年から連載中)。マンガの力で女子の数学人気アップとなるか…その可能性は低いかもしれないけど、数学科出身の著者が描くマニアックな数学ネタの4コマはくすっと笑える。
(日経エンタテインメント! 高宮哲)
[日経エンタテインメント!2012年10月号の記事を基に再構成]
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