偏差値で得点調整、選択科目によって有利不利も

私立大学ではかつて、選択科目間の得点調整を偏差値によって行うことがよくあった。しかし、前出の計算結果で明らかなように、平均点が同じであっても、偏差値に換算すると有利不利が出てしまうのである。前出のケースでは、同じ100点をとるならば地理でとった方が偏差値上は有利であり、同じ30点ならば数学でとった方が有利になってしまうのだ。

最近ではこうした大学でも、偏差値による得点調整を行っていないところがある。それにはこのような理由があったのである。

問題の難易度の差、マークシート式か記述式か、等々の要因を考慮すると(ア)(イ)(ウ)にはどれも一長一短がある。ただ、その仕組みについては理解しておきたい。

最後にもう一つ。実社会での統計の重要性を鑑みて、学習指導要領の上では統計教育が重視されてきている。ところが教育現場では、中学でも高校でも統計の内容は割愛する学校が多い。それは多分に「入試には統計は無関係」と考えられていることが原因である。

8月9日に公表された本年度の全国学力テストの結果でも、気になることがあった。中学3年の数学Aの問題で統計に関する平易な問題が出題されたのだが、「統計に関しては全く学んでいない生徒が多い」と考えるしかないほど残念な結果であった。実は社会人向けの高校数学復習の書でも、統計の記述がない書が大半である。拙著「新体系・高校数学の教科書(下)」では「大切なものは、入試とは無関係に詳しく述べよう」という信念のもと、統計の扱いを厚くした。教育現場でも、もっと統計についてしっかり教えるべきであろう。

芳沢光雄(よしざわ・みつお) 1953年、東京生まれ。東京理科大学教授を経て現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。理学博士。数学教育に力を注ぐ。主な著書に「数学的思考法」「ぼくも算数が苦手だった」「新体系・高校数学の教科書」「新体系・中学数学の教科書」。59歳。
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