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キュウリは最も栄養のないフルーツ? 東京で逆襲

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かつてギネスブックに「最も栄養価の低い果実」として登録されたこともあるキュウリ。そんなに栄養価が低いのか。そもそも「果実」とはどういうことか。数々の汚名や誤解、食習慣の変化に伴い減り続けている消費をてこ入れしようと、東北の産地が新たな動きを見せている。

「キュウリビズ」始動 銀座でイベント

暑い夏にはよく冷えたキュウリを――。7月9日、東京各地で「キュウリビズ」運動が始まった。東北6県のJA全農が合同で進めるキュウリのPRイベントだ。

東京・大田市場での試食会のほか、銀座の商業施設、プランタン銀座とマロニエゲートでは21日まで「キュウリビズフェア」が開催される。期間中はキュウリシャーベットやキュウリカレーなど、キュウリを使った新メニューが登場する予定だ。JR京浜東北線など電車内にもポスターを掲示している。

「キュウリは約95%が水分で、カリウムも含まれています。暑いときにはキュウリを食べてクールダウンしてください」。運動を主導するJA全農福島の担当者は、キュウリの効能を訴える。

この運動、もともと2006年に福島が始めたPR活動が発端で、08年には東北全県に広がった。東北一丸となっての取り組みにはワケがある。

7、8月のキュウリは東北が主産地で、東京都中央卸売市場の入荷量は東北6県で約8割を占める。しかしここ数年、キュウリは消費が伸び悩み、価格も振るわない。家計調査によると、1世帯あたりのキュウリ年間消費量は8349グラム(2010~12年の平均)と、10年前と比べ17%も減った。なぜか。

「漬物を食べる習慣が薄れ、サラダか酢の物、冷やし中華くらいでしか食べられていない。昔ほど量を食べなくなったのです。消費構造が変化したのに、産地からのメニュー提案は少なかった」。大手卸、東京青果営業本部の加藤宏一さんは苦言を呈する。

これに震災後の風評被害が追い打ちをかけた。東北の中でも生産量が特に多いのが福島だ。キュウリビズのとりまとめ役でもあるJA福島は反転攻勢を狙ったPRに力を入れている。

キュウリは「下品」「能なし」 江戸時代に散々な汚名

キュウリはこれまでも、数々の汚名を着せられてきた。稲山光男著「まるごと楽しむキュウリ百科」(農山漁村文化協会)によると、江戸時代の儒学者で農業にも通じていた貝原益軒はキュウリについて、「これ瓜類の下品(げぼん)なり、味よからずかつ小毒あり」と著書「菜譜」で記したという。

さらには水戸黄門でおなじみの徳川光圀は「毒多くして能なし」とまで言ったとか。光圀は当代随一の食通だっただけに、きつい発言だ。当時のキュウリは苦みがあったといい、それが「毒」とされたのかもしれない。

ちなみに江戸時代、武士はキュウリを輪切りにして食べなかったといわれている。その理由は「切り口が葵の御紋に見えるから」。恐れ多いというわけだ。試しに輪切りにしてみると、何となく似ているようなそうでもないような……。個体差があるのかもしれない。

キュウリ=フルーツ? 野菜と果実の違いとは

「汚名」はそれだけではない。なんとギネスブックに載ったこともあるという。それもあまりうれしくないテーマで。ネット上では「世界一栄養価の低い野菜」などの書き込みが目立ったが本当なのか。

「ギネスブック 世界記録事典」を過去にさかのぼって調べてみると、講談社が発行している1987年版に問題の記述があった。項目名は「最も栄養価の高い果実・低い果実」。中身を引用しよう。

「一般に生で食べる果実38種を分析したところ、抜群のカロリー価を示したのはアボカドで、その熱量は100g当たり163カロリー、最低はキュウリで、同16カロリー」

ここで2つの疑問が頭をよぎる。栄養価というよりカロリーの話ではないか。そしてキュウリは果実なのか。

まずはカロリーについてみてみよう。「日本食品標準成分表2010」によると、キュウリは100g当たり14カロリーだった。

確かに低いが、他にも低い野菜はある。例えば小松菜は同じく14カロリーだ。緑豆もやしだって14。チンゲンサイに至っては9カロリーともっと低い。どれも海外にはない野菜だから比較対象にならなかった、ということだろうか?

そもそも「果実」というのが怪しい。誤訳の可能性もあるので、原本を探してみた。

英語版の項目名は「Most and least nutritive」。なんと日本語版と同じく「栄養価」だ。誤訳ではなかった。そして中身を読むと、38の「fruits」と書いてあった。フルーツ、つまり果実だ。キュウリはフルーツなのか?

キュウリ、米国ではフルーツに分類することも

実は、キュウリは海外では「果実」と分類されることが多いという。

米国で調理科学のバイブルともいわれている「マギーキッチンサイエンス」(ハロルド・マギー著、共立出版)によると、「植物学的には種子を取り巻く部分を果実といい、キュウリやナス、トマトは果実である」と解説する。ギネスブックはこの植物学的な定義に従った、ということのようだ。

ただしカロリーを栄養価としてしまうのはいかがなものか。むしろ「キュウリは低カロリーでヘルシー」といえばイメージも変わろうものだが……。

イチゴ・メロン・スイカ 出荷上は野菜、消費時は果実

野菜と果実の分類は日本国内でもややこしい。農畜産業振興機構によると、生産面で見るか、消費面で見るかによって何が野菜か変わってくる。

生産面に着目すると、イチゴやメロン、スイカも野菜となる。これらはいずれも「苗を植えて1年で収穫する点で一般的な野菜と同じ」だからだ。

しかし消費者からすれば、イチゴもメロンもスイカも果実だ。そこは米国でも同じ。ハロルド・マギーもこう記す。

「果実は動物に食べさせることで種を遠くに広めてきた。そのために鮮やかな色や甘みを獲得してきた」。同書によると、ベジタブルの語源は元気づける、活性化するという意味のラテン語で、フルーツは喜び、快楽、楽しみなどが語源だという。マギーは「キュウリやトマトは植物学的には果実だが、実態は野菜」だと説く。植物学的な分類を当てはめたギネスブックの記述はやはり、食卓の感覚とはずれている。


果実は学術的、果物は感覚的な分類

ちなみに日本の辞書を調べてみると、「果実」と「果物」では使い方が違うようだ。果実については広辞苑(第6版)が「種子植物の花の受精後の様態。雌しべの子房および付随した部分が発育してでき、中に種子を含む」としている。他の辞書も同様で、いずれも植物学的な記述となっている。

これに対して「果物」はより感覚的だ。「学研国語大辞典 第2版」は果物を「食用となる水分と甘みの多い草木の実」と定義する。野菜と果物について「その区別は習慣的なものである」とも記述する。

「日本語大辞典」(講談社)は果物について、「欧米では、トマト・スイカなど、生食する果菜も含める」とまで言及している。これはつまり、日本ではトマトやスイカは野菜である、といいたいようだ。

「イボなしキュウリ」が変えたコンビニの冷やし中華

これからの季節、キュウリといえばやっぱり冷やし中華だ。7月7日は「冷やし中華の日」。この日は二十四節気の「小暑」にあたり、冷やし中華を最もおいしく感じる季節だから、だという。

冷やし中華の食べ方は、理にかなっている。キュウリにはビタミンCを壊す作用のある酵素が含まれている。この酵素は酢やレモンを加えると働きにくくなるため、酸味のあるたれで食べる冷やし中華だと、トマトのビタミンCを壊さないのだ。酵素の働きは、加熱することでも抑えられる。

ところで冷やし中華といえば、最近はコンビニの定番メニューになっている。実はコンビニで使っているキュウリの多くは、イボのないキュウリを使っているという。どうしてなのか。

セブン―イレブン向けの調理めんなどを手掛けているヒガシヤデリカ(東京都板橋区)に話を聞いた。

「キュウリのイボの周りは雑菌がたまりやすいのです。普通に家庭で食べるには問題ありませんが、カットした状態で店頭に並べるためには念入りに洗浄しなくてはならない。イボなしだと菌数が圧倒的に少なく、洗浄や殺菌作業を効率化できました」

イボなしキュウリの名は「フリーダム」。開発したのはサカタのタネ(横浜市)だ。価格は通常のキュウリより高めだが、加工業者向けに重宝されているようだ。

中国では黄色い完熟キュウリを使うことも

日本は世界的に見ても、キュウリをよく食べる国のひとつだ。

国連食糧農業機関(FAO)によると、生産量は世界9位。圧倒的に多いのは中国で、2位のイランの20倍にもなる。

中国ではキュウリを生でもいため物でも食べる。完熟させて黄色くなったものをスープなどに使うこともあるという。ただし完熟キュウリは酸味が強く、日本ではあまり好まれないようだ。

ちなみにキュウリは漢字では「胡瓜」と書く。完熟すると黄色くなることから「黄瓜」と書くこともある。ズッキーニはカボチャの仲間でキュウリではない。ゴーヤーはニガウリの名の通りウリ科の植物で、キュウリの仲間だ。

旬を迎えた東北のキュウリ。6県の同盟は実を結ぶか。キュウリビズの行方が注目される。(電子報道部 河尻定)

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