2014/3/13

「着ぐるみ」が生み出す個性・生命感

川北監督は「米国の興行主から『こんなシーンもほしい』と注文が付いたこともあったようだ」と振り返る。怪獣映画にはなぜか頻繁に日本の城郭が登場する。東京タワーも倒されてしまう。キングギドラが戦う場所は富士山麓が多い。日本の観光案内を兼ねていたのだろう。

日本の怪獣映画は着ぐるみの中に人が入って操作する。海外では「作り物のスーツ」と低い評価しか与えない映画人も少なくない。現在はCG(コンピューターグラフィックス)が主流になっている。ただ川北監督は「着ぐるみの方が生き生きとした躍動感が生み出せる場合がある。怪獣の動きで予想できないハプニング的な映像が撮れる場合が出てくる」と力説する。CGではそうはいかない。「着ぐるみだからこそ怪獣自体に微妙な動きが生まれそれぞれ独自の個性、キャラクターが生まれた。海外でも人気が長続きする理由ではないか」(川北監督)

64年に東宝の特殊技術課に属していた村瀬継蔵氏(80、現・ツエニー社長)は、昭和・平成2代のキングギドラ製作を手がけた特殊造形の大家だ。着ぐるみ怪獣は先ず金アミを曲げて型を作り、石こうでなどで固めていく。最後に人間の入る部分を抜いて完成させる。「キングギドラの首の部分はちくわ状だった」(村瀬社長)。胴体にゴム素材のラテックスを使用し、金色のウロコは1枚1枚手作業で貼って完成させた。正確に左右対称には出来ないがかえってその方が生き物としてのイメージを醸し出せたという。

平成版キングギドラでは、翼の骨に昭和版のように竹ではなく釣りざおに用いるグラスロッドを用いた。「それだけの違いでキングギドラの生き物としての印象が少し薄れた。失敗したと思った」(村瀬氏)。細部にまでこだわり続けるもの作りの精神が、実は日本のソフトが世界にどこまで通用するか競争力のカギを握っている。その原則は半世紀前も今日も変わっていないと村瀬社長は強調する。

片山慶大教授はキングギドラやゴジラは今日に通じる存在と説く。「キングギドラは、そのゴージャスさによって右肩上がり、豊かな暮らし、未来への憧れというものを招き寄せるキャラクターだった」(片山教授)。敵役ながら、どんどん先に行けるという豊かな物量のイメージを持っているという。一方のゴジラは反原発、成長の限界を前提としたときに取り上げられることが最近増えてきている。「いつでも形を変えてこの2つの価値観は争ってきている。日本の現代にもそのままいきる問題が表現されている」(片山教授)。

(電子整理部 松本治人)