大賞はパラリンピアンの佐藤真海さん、ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞者9人の横顔
月刊誌『日経WOMAN』は2013年、各界でもっとも活躍した働く女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2014」を12月6日に発表しました。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」とは、(1)働く女性のロールモデルを掲示、(2)組織の中に埋もれがちな個人の業績に光を当てる、(3)活躍した女性たちを通して時代の変化の矛先をとらえるという主旨のもと、1999年から毎年実施するアワードで、本年が15回目となります。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2014」大賞に選ばれたのは、ハンデを乗り越えてパラリンピックに3度出場し2020年のオリンピック・パラリンピックの東京招致に貢献したサントリーホールディングスCSR推進部の佐藤真海さん(31歳)です。
佐藤さんは、早稲田大学在学中の19歳のときに骨肉腫を発症し、右足の膝から下を切断。失意に陥るも、義足で好きだったスポーツを再開し、わずか1年でアテネパラリンピック(走り幅跳び)に出場。北京、ロンドンとパラリンピック連続出場を果たしました。一方、一般社員としてサントリーホールディングスに入社。CSR推進部にて次世代育成事業を企画から実現まで一貫して自身で手がけるほか、震災復興支援にも尽力。また28歳で早稲田大学大学院に進学し、日本のパラリンピックの現状と海外の障害者スポーツについての調査研究を行い、自らのキャリアの幅を広げてきました。
2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致活動では、2013年9月に行われたIOC(国際オリンピック委員会)総会の最終プレゼンテーションでトップバッターを務め、独学でブラッシュアップした英語でのスピーチで多くの人の心をつかみ、東京開催決定に大きく貢献しました。並々ならぬ努力を重ねて困難を乗り越え、自分にしかできないキャリアを築いてきた姿が、多くの働く女性たちに力を与える存在になっています。
準大賞には、創薬の世界に革命を起こす技術を見いだし、時価総額1600億円超(2013年12月2日現在)のバイオベンチャー・ペプチドリームの起業と上場をリードした東京大学エッジキャピタル、パートナーの片田江舞子さん、国民的大ヒットドラマ『あまちゃん』で斬新な番組ロゴやセット、キャラクターをデザインして作品の世界観を確立させた日本放送協会(NHK)デザインセンター映像デザイン部の岩倉暢子さんが選ばれました。
大賞<キャリアクリエイト部門>
佐藤 真海さん(31歳)さとう・まみ
サントリーホールディングス株式会社 CSR推進部
パラリンピアン(※)
※パラリンピアン=障害者スポーツ競技会「パラリンピック」に出場した選手の呼称
ハンデを乗り越えて独自のキャリアを切り開き、
2020年五輪の東京招致に貢献
●突然の病によるハンデを抱えながらも、仕事と競技を両立させながら、独自のキャリアを築いてきた
●社会人大学院への進学、国際大会に単独参加し英語力を磨くなど、自ら能力開発の機会をつくり挑戦してきた
●東京オリンピック・パラリンピックの最終プレゼンテーションのスピーチで感動を呼び、開催決定に貢献
早稲田大学商学部在学中の19歳のとき、100万人に1人の発症率と言われる小児ガンの一種、骨肉腫を患い、右足の膝から下を切断。義足生活となり失意に陥るも、好きだったスポーツを再開することで生きる希望を見いだす。2004年4月、サントリー(現・サントリーホールディングス)に一般社員として入社し、同年9月に走り幅跳びでアテネパラリンピックに出場。2008年北京、2012年ロンドンとパラリンピック連続出場を果たす。
サントリーでは一般社員として、CSR推進部でスポーツを通した社会貢献業務を担当。「子どもたちに自身の体験を伝えながら、スポーツの楽しさ、夢を持つことの大切さを教える」という次世代育成プログラムを自ら企画し、その仕事に集中することで練習時間を確保した。28歳からは早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学。仕事と競技を続けながら、日本と海外の障害者スポーツをテーマに1年間学んだ。2011年の東日本大震災以降は出身地の宮城県気仙沼市をはじめ被災地にも頻繁に足を運び、復興に挑む人たちにパワーを与えている。
2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致活動では、2013年9月に行われたIOC(国際オリンピック委員会)総会の最終プレゼンテーションでトップバッターを務める。国際大会に単独出場するなどして磨いた英語力を生かし、自身の経験や故郷・気仙沼への思いを盛り込みながらスポーツの力の素晴らしさを語ったスピーチは反響を呼び、東京開催決定の呼び水となった。
準大賞<リーダー部門>
片田江 舞子さん(38歳) かただえ・まいこ
株式会社東京大学エッジキャピタル パートナー
創薬の世界に革命を起こす技術を見いだし
時価総額1600億円の
バイオベンチャーの起業と上場をリード
●理系出身のベンチャーキャピタリストとして、画期的な創薬技術を持つバイオベンチャーの起業と上場をリードした
●理系の博士号取得者が、研究職ではなくベンチャーキャピタリストという道で力を発揮し、社会に貢献するという新しいロールモデルを示した
理学博士号を持つベンチャーキャピタリストとして、東京大学の菅裕明教授が開発した「特殊ペプチド創製技術」に新たな創薬開発の芽を見いだし、創薬ベンチャー「ペプチドリーム」の起業を支援。特許の整理をはじめ大学発ベンチャーに必要な様々な手続きをサポートし、投資を実行。2013年6月の同社の東証マザーズ上場時には公開価格の3倍の高値がつき、時価総額1600億円超(2013年12月2日現在)の大型ベンチャーへの成長に貢献した
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準大賞<ヒットメーカー部門>
岩倉 暢子さん(35歳) いわくら・ようこ
日本放送協会 デザインセンター 映像デザイン部
国民的大ヒットドラマ『あまちゃん』で、
斬新な番組ロゴやセット、キャラクターをデザイン。
作品の世界観を確立
●番組ロゴからキャラクターのデザインまで、『あまちゃん』の世界観をつくるビジュアルを手がけ、ヒットを支えた
●従来の"美術スタッフ"の枠を超え、自ら仕事を作り出し、主体的に取り組むことでチームの成果につなげてきた
「朝ドラ」で初めて局内スタッフとして番組ロゴのコンペに加わり、斬新なロゴデザインが採用され、ドラマの世界観を決定づける重要な役割を果たした。美術スタッフの主な仕事である撮影セットの設計以外に、ドラマに登場するアイドルユニット「潮騒のメモリーズ」の衣装やイラスト、ご当地グルメのキャラクターなど劇中に登場するグラフィックデザイン数十点を自主的に制作。従来の美術スタッフの枠を超えた活躍が、制作現場の求心力を高め、「朝ドラ」の世界観に新風を吹き込み、ヒットを支えた
入賞<リーダー部門>
山田 由佳さん(50歳) やまだ・ゆか
パナソニック株式会社 先端技術研究所
エコマテリアル研究グループ グループマネージャー
環境・エネルギー分野で世界最高性能、
世界初の2つの最先端技術開発を成功に導いたリーダー
世界最高性能を記録した「人工光合成システム」と、低温の排熱で発電する世界初の「熱発電チューブ」という環境・エネルギー分野の2つの注目技術の開発を責任者としてリードした。また、部下の力を引き出すマネジメント力で、女性研究者の管理職としてのロールモデルを構築した
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入賞<ヒットメーカー部門>
川上 登美子さん(33歳) かわかみ・とみこ
株式会社資生堂 国際事業部 アジアパシフィック営業部
重ねたメイクがお湯で落とせる世界初の化粧下地を発案
2カ月で200万個の累計出荷数を達成
お湯だけで重ねたメイクを落とせるという全く新しい機能を持つ化粧下地を発案。商品開発を主導した。店頭発売開始から2カ月で200万個という異例の出荷数を達成し、成熟した国内化粧品市場にインパクトを与えた
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入賞<ヒットメーカー部門>
藤代 智春さん(28歳) ふじしろ・ちはる
ピップ株式会社 商品開発事業本部 マーケティング部
足指が開く着圧靴下で、女性の足悩みを解消
市場最速で100万足を突破するヒットに
疲れた脚のケアを目的とする着圧靴下に、足指を広げる機能を付与した業界初の商品を発案し、100万足の大ヒットに導いた。3年間で「スリムウォーク」ブランドの新商品12点をリリースし、消費者ニーズを捉えた企画開発で市場の活性化に貢献
入賞<キャリアクリエイト部門>
坪内 知佳さん(27歳) つぼうち・ちか
萩大島船団丸 代表
漁師60人を率いて魚の自家出荷を開始
漁業の6次産業化を実現する
知見のなかった漁業の世界に飛び込み、山口県萩市大島で3社約60人の漁業者をまとめ、魚の自家出荷を取り仕切る。漁協との調整や出荷ルートの確保、販路開拓までを手がけ、2012年に6次産業化を実現。2013年度は黒字化を見込むなど、全国の漁業関係者から注目を集める
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入賞<キャリアクリエイト部門>
田中 知美さん(44歳) たなか・ともみ
合同会社エッジ 代表
合同会社ドリームオン 代表
経済学者の視点を生かし、40代で社会起業家へ
独自の貧困層支援を行う
世界銀行のコンサルタントや経済学者として得た知見を生かし、貧困問題の解消を実現するため、40代で社会起業家に。バングラデシュで女性の自立支援のためのパソコンスクールを開校するなど、貧困層の声を反映した独自の支援を展開
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入賞<キャリアクリエイト部門>
吉田 正子さん(52歳) よしだ・まさこ
東京海上日動火災保険株式会社 執行役員
旅行業営業部長
一般職で入社後、営業や人事など幅広い分野で成果を上げ、
地域型社員初の執行役員に
高校卒業後、一般職として入社。事務職を経て、営業、人事など幅広い分野で実績を残し、2013年、52歳で同社の地域型社員(※)として初の執行役員に就任。地域型社員でも成果を積み重ねることで役員に昇進できるという新たな道筋を示した
※地域型社員とは、転居を伴う異動のない社員のこと
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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