大阪星光学院 観察と実験の勘所を試す理科入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(9)

問6 実験を終えたまさはる君は、用いた種子の中でレタスがもっとも小さいことに気付きました。これについて考えられることとして適当なものを次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。

ア. レタスの種子は、その中にたくわえている栄養が少ないので、発芽後すぐに光を利用して栄養がつくりだせるよう、明るいところで発芽する。
イ. レタスの種子は、その中にたくわえている栄養が少ないので、発芽後すぐに栄養を使えるよう、暖かいところで発芽する。
ウ. レタスの種子は、その中にたくわえている水が少ないので、発芽後すぐに水が吸収できるよう、水分の多いところで発芽する。
エ. レタスの種子は、その中にたくわえている水が少ないので、発芽後すぐにかわかないよう、他の植物の影になるところで発芽する。

実験結果からわかることだけを見て、選択肢に描かれた因果関係が成り立つかを考えれば、予備知識がなくても正解にたどりつける。問5の答えはアとオ。問6の答えはアである。

「レタスの種子は非常に小さいんです。小さすぎて、発芽に必要な養分を十分に蓄えることができません。だから、発芽してもすぐに光合成ができない条件下では、発芽しないようになっているんです。こういう種子を光発芽種子といいます。でもそんなことはもちろん知らなくもいいんです。むしろ、問題中の実験を通して、『えっ、そうなんだ』『楽しいかも』と思ってくれればいいなという思いで作問しています」と範国教諭は教えてくれた。

山荘や臨海学校での学びにつながる

大阪星光では、入学するとまず理科では、「身近な生き物を調べてみよう」というテーマで植物の観察に時間をかける。前述の問題のように、実際にワークシートを用意して観察結果を記入してもらう。手始めは、学校敷地内にある、松尾芭蕉や与謝蕪村らゆかりの「蕉蕪園」という庭園に自生する植物だ。「蕉蕪園にある草花について私自身がすべて調べるだけで8年ほどかかりました。身近にある小さな自然でも知らないことだらけなのですよ」と範国教諭は笑う。

蕉蕪園での観察の際に生徒たちに配付するという手作りの冊子には、まさに入試に掲載されているのと同様の手書きのスケッチが多数描かれている。それを手に、目の前の植物が何なのかを同定していく。つまり、大阪星光の入試問題は、入学した後の授業への予告編といえるのだ。

「学校としては、先入観なく、物事を素直に見ることのできる生徒を育てたいという思いがあります。しかし教師の知識や指導力に頼るだけでは限界があります。最も効果的なのは『本物を見せること』であると考え、黒姫や南部に校外施設をつくったという経緯があります。本物と触れ合う中で、素直なものの見方を身に付けてほしいと考えています。

黒姫での合宿ではやはりフィールドワークを行い、植物の観察もする。南部の海岸では海の生物についての観察もする。「海の生物なんて、どこで区別をするのか、最初は私でもさっぱりわかりませんでした。だから教師も生徒も同じ作業をします。その中に本当の発見があります。できれば、中学受験勉強が忙しくなる前の、小学校低学年のうちに、ご家庭で、ご両親と、身近な生き物に、一歩近づいて見てみる経験をたくさん積んでほしいなと思います」

大阪星光では、生徒たちに「喜びの心をもつ」ことの大切さをくり返し説く。これはサレジオ修道会の創設者、聖ヨハネ・ボスコが常に提唱していた教えに由来する。「心に喜びがあるとき、私たちは幸せになれる。心に喜びがあるときには、私たちは人生において悪いものを退け、人間として正しい道を歩むことができるようになる」という教えだ。

心に喜びを得るのに特別な何かは要らない。見慣れたものにも注意を払い、ときどき見方を変えたりすることで、そこに発見があり、喜びを見出すことができる。それができる素質をもった子どもたちを、大阪星光は求めているのである。「19世紀の北イタリアで聖ヨハネ・ボスコが理想とした教育を、現代の日本の青少年に合うようにアレンジすると、こういう教育になったのです」と範国教諭。

DATA

大阪星光学院中学校・高等学校
http://www.osakaseiko.ac.jp
・募集定員 男子約190人(高校から約20人、ただし2015年度の高校入試は実施しないことが決定している。2016年度以降は未定)
・入試日 1月18日
・所在地 所在地 大阪府大阪市天王寺区
・最寄り駅 地下鉄谷町線「四天王寺前夕陽ケ丘」駅から徒歩約2分
おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、私立小学校での教員経験もある。著書に『中学受験という選択』(日本経済新聞出版社)、『生きる力ってなんですか?』(日経BP社)、『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』(ダイヤモンド社)などがある。

(構成 日経キッズプラス)

生きる力ってなんですか?

著者:おおたとしまさ
出版:日経BP社
価格:1404円(税込み)


日経ホームマガジン 中学受験する?公立に行く? (日経ホームマガジン 日経Kids+)

著者:
出版:日経BP社
価格:920円(税込み)