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薬の前に…間違いだらけの「コレステロール値」神話

2014/2/26

こだわりOFF

コレステロール値が高いと動脈硬化になりやすい――。当たり前のように信じていたコレステロール神話に今、疑問が投げかけられている。 健康診断の結果、「コレステロール値、基準値より高いなあ、油ものを控えなければ」とため息をつく人も多いだろう。だが、その「基準値」が間違っているとしたら……。

「コレステロール値は高くていい。薬で下げてはいけません」と、驚くべき論を展開するのは東海大学名誉教授の大櫛陽一さん。

「日本のコレステロール基準値は欧米に比べ厳しすぎる」と大櫛さんは指摘する。アメリカでは、LDLコレステロールの基準値は、薬物治療開始ラインが190mg/dl、生活習慣の改善目標値が160mg/dl。それ以下であれば、生活習慣の見直しも不要だということになる。これに対して日本の特定健診では、LDLコレステロール120mg/dl以上を「保健指導」、140mg/dl以上は「受診勧奨」としている。

「その結果、日本でのコレステロール低下薬の市場規模は3000億円超に膨らんでいます。基準値は性別、年齢により異なるはずで、一つの基準で判断するのもおかしい。50歳の男性なら、LDLコレステロールが180mg/dl以上にならなければ医療機関に行くべきではないと私は考えます」(大櫛さん)

特に女性は、中高年になるとコレステロール値が上昇傾向にある。

「欧米では女性にコレステロール低下薬は不要というのが常識。女性と高齢者は高いほうがいいのです。女性は体内に脂肪をためて使う能力があるので、多少脂質が高くても健康に影響を与えることはない。さらに、加齢とともに女性ホルモンが低下すると、免疫力を補うためにコレステロール値が上がるのは理にかなっています」(大櫛さん)

悪玉コレステロールも体には必要なもの

コレステロールというと、とかく「下げなければ」という印象があるが、「健康のために不可欠」と大櫛さんは言う。コレステロールは細胞膜、神経、女性ホルモンや副腎皮質ホルモン、ビタミンDなどの素になるのだ。

コレステロールには、悪玉といわれる「LDL」と、善玉といわれる「HDL」とがあるが、この言い方もおかしいと大櫛さんは言う。

「細胞にコレステロールを運ぶのがLDL。古くなった細胞からコレステロールを肝臓に戻すのがHDLで、両方必要なのです」(大櫛さん)

1987~2006年に東海大学で神奈川県伊勢原市在住の約2万5000人を対象に平均8.1年間追跡調査したところ、男性はLDLコレステロール値が高くても死亡率に変化はなく、むしろ100mg/dl以下は死亡率が上がるという結果が出た。女性も120mg/dl以下で死亡率が上がった。「心筋梗塞の発症率は、家族性高脂血症といわれるごく一部の人を除けば、コレステロール値が高くても上昇しないことが分かっています」と大櫛さん。

同調査では、中性脂肪についても高いほうが死亡率が低いことが明らかになった。日本の中性脂肪の基準値は150mg/dl以下だが、アメリカでは1000mg/dl以下。ここでも大きな隔たりがある。

1990年代にはアメリカでもコレステロール値を下げるため、卵を避け、バターの代わりにマーガリンを推奨していた。しかし、現在は卵の摂取量に制限はなくなり、マーガリンのトランス脂肪酸のほうが問題視され、バターが薦められている。体内の中性脂肪過剰の主原因は、食品の脂肪ではなく、糖質過剰であることが分かった。コレステロール神話にとらわれて薬を飲む前に、年齢や性別を加味した数値の幅を知っておこう。

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コレステロール・中性脂肪の数値の正しい見方