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保育園、「認可なら安心」は間違いだった

待機児童の実態(3)

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NIKKEI STYLE

 第1回「保育園探し「どこかに入れる」は幻想だった」、第2回「やっと入れた保育園… でもそこは地獄だった」に続く最終回。著者は2011年1月に慶太(仮名)を生んだワーママだ。8つの保育園すべてに入園を断られ、絶望の中、やっと入園先が見つかった。しかし、その園は数々の問題を抱えていた――。

今思えば、区役所の女性も知っていたはずだ。「あの保育園なら空いている」理由を。だから、あんなギリギリの時期でも空いていたのだ。どこにも入園できず必死だった私は、ただただお礼を言った。

0~1歳の子ども40人に対し、保育士3人は違法

0~1歳児を中心とした40人の園で保育士が3人しかいないこと自体、違法だ。認可外保育施設の規定は、児童福祉施設最低基準第33条2項が基準になっている。

乳児3人につき保育従事者1人、1~2歳児は6人につき1人が最低基準。少なくとも、わが子が通っていた当時はその条件を満たしておらず、違法だった。役所にも繰り返しクレームが来ていたはず。それでも、区では受け皿がないため、この認可外園を勧めた。それに気づいたのは、ずっと後のことだった。

既に職場に復帰していたので、昼休みなどに会社の廊下の隅っこから、区内の認証保育園や認可外保育園にまだ空きがないか片っ端から電話する日々が続いた。保育ママや一時保育所も探した。電車で3~4駅離れた保育園でも、とにかく電話をかけて状況を伝えた。

「息子が、笑わなくなり、しゃべらなくなったんです。空きを探しています」と言いながら、涙があふれることもあった。認めたくなかった事実を、口にしたことで認めざるを得なくなったのだ。自分が過剰に反応しているモンスターペアレントになっているんじゃないかと悩んだこともあったが、あの光景がよみがえる度に転園の決意は固くなった。

保育関係者の間でも、やはりA園は悪名高かったようだ。電話口で親身になってくれる他園の先生に聞かれて話すと「ああ~、よく来るのよ、あそこから」という言葉も何度か耳にした。しかし、そんな情報はネットにもどこにも見つからなかった。「うちの園はいっぱいだけど、1人くらい入れられるかもしれないから、区に掛け合ってあげる」と言ってくれた園もあったが、結局NG。役所にもさらに何度も電話をしたが、「書類を提出して順番を待ってください」の一点張り。

それでもA園にこれ以上通わせたくなかったため、「ほかが見つかりました」とウソをついて2週間で退園。以前お世話になったことのある一時保育所が親身になって次の2週間だけ預かってくれた。

しかし「1カ月間に10日まで」「9時から16時まで」という区の一時保育規定は、仕事復帰していた私には厳しい。16時に迎えに行くために15時に職場を出るのはどだい無理で、一時保育利用が長期化したら勤務し続けられないことは目に見えていた。

転園先が見つかり、会社の廊下で泣き崩れそうになった

4月も20日を過ぎたころ。1年前に保育園巡りで訪れていた認可外のC園から「5月から慶太くんをお預かりできます」という1本の電話が入った。会社の廊下で電話を受け、やっと差し伸べられた手に泣き崩れそうだった。改めてウエイティングリストに載せてもらっていた結果がようやく出た。

家から徒歩30分、自転車でも10分かかる小さな認可外保育園。20畳ほどのマンションの1室に20人弱の子どもがいて、見学のときは「こんな狭い場所はいやだな」と思った園だった。でも、その後何度か空きを確認しに電話したときもとても親身に受けてくれて、息子の名前も覚えてくれていた先生。「慶太くんに会えるのが楽しみです!」という言葉に再び涙した。

慶太は5月からその保育園に入園した。1歳児と歩いては通えない距離なので、夜が遅い私に代わって、夫が文字通り雨の日も雪の日も送り迎えを自転車で頑張ってくれた。

実はそのC園は、保育園問題に悩んだお母さんが始めた園。規模は小さくても、子ども20人弱に対していつも5~7人のベテラン先生がいて、毎日公園にお散歩へ行き、手作りの給食やおやつを食べ、造形やダンスを楽しむ。温かくて本当に安心して息子を預けることができた。連絡ノートにも、慶太がその日にできたことを毎日びっしり書いてくれて、毎日読むのが楽しみだった。

安心したのも束の間、再び振り出しに

そして、1年後。

待機児童の増加を受け、急遽できた新規の認可園に4月に移ることができるという連絡が入った。

A園での悪夢がよみがえり、夫と「息子はC園にすっかり慣れているし、また移すのはかわいそう。どうしたものか」と何日も家族会議を重ねた。

しかし、認可外園の保育代は月8万円以上。新しい認可園は家からも近く、保育代も半分程度。最後の決め手は「一度断ると、もう二度と入れないかもしれない」という厳しい申し込み状況だった。

結局、4月から認可園D園に移った。息子にとっては2歳にしてすでに3園目。

しかもA園以来、新しい場所に強い不信感を覚えるようになった慶太には環境の変化は大きなハードルだった。10月になっても毎朝「C園に行きたい!」と泣きわめく日々が続いた。保育園巡りをしていた頃の「何が何でも認可園。認可園なら安心」という思い込みは、間違っていたような気がしてきた。

「認可外はよくない」と思い込んでいた自分を猛省

D園は新設ということもあり、園庭は狭く、庭の遊具もゼロだった。先生も20代中心と若く、やる気はあるが育児相談ができる雰囲気ではなく、とにかく新しい園での日々にいっぱいいっぱいというのが見てとれる。

私たちが苦しまされたA園は認可外だったが、同時に私たち一家を救ってくれたC園も認可外だった。「認可外はよくないんじゃないか」と思い込んでいたことを猛省した。認可外も認可も、結局はその保育園によって大きく状況が異なる。

早めに始めた保活は何も意味をなさず、結局職場復帰後まで保活を続けることになった。人手不足だった職場に戻り、申し訳ない気持ちでいっぱいで息子の状況を相談することもできなかった。休み時間にコソコソと廊下の隅っこで電話をかけ、逃げるように早退する日々。同僚は文句も言わず見守ってくれたが、「やっと戻ってきたのに、まだお荷物か」…。そんな罪悪感に勝手にさいなまれ、保育園が見つからない苦しさとの中で、私自身の体調を崩したこともあった。

こんな思いをする親子を、もう決して増やしてはいけない

「大変だっただろうけど、これも勉強だね」という言葉もあるが、あんな辛い思いはもう嫌だ。親の自分はまだしも、息子にはもう笑顔を忘れるような思いはさせたくない。

待機児童の実態の一例として知ってもらえたらと思い、今回この原稿を執筆する機会をいただいたが、あの日の息子の姿がよみがえって何度も筆が止まった。私よりも辛い思い、大変な思いをした方も多くいるだろう。あの時、私は疲れきっていたうえに、子どもへの影響を心配し、役所やA園を抗議したり訴えたりすることもできなかった。今、こうして小さい声を文章ででも残すことで、今後、同じ思いをする親を少しでも減らすことができたら嬉しいと思う。

「子どもが歓迎される社会」を願う

様々な会社で働く先輩ママや友人の話を聞くと、仕事を続けられる人の多くは、両親(祖父母)やベビーシッター、ファミリーサポート制度などの援助が得られる人であることに気づく。夫たちは、深夜まで仕事で当てにならない。子育てに興味がないのではなく、帰って来ることのできない職場環境なのだ。日本の家庭の多くは未だ「子ども、母、その母」によって成り立っているのではないか。「子、母、父」ではなく。経済活動を担う夫が長時間残業をこなしている専業主婦世帯に至っては、これはなおさら強い傾向にあると思う。

共働きであっても、時間的にも経済的にもゆとりのない世帯もある。専業主婦やフリーランスは、育休中の手当てもない。「2人目が欲しいけど、こんな状況じゃ無理…」と言うカップルが多くても無理はない。

保育園には受け入れ先がない、働かずに家庭で育てていける経済的ゆとりもない、やりがいのある仕事に就いても夫婦2人ではどうにか"両立"するのが精一杯…。そんな現実に、日本社会に子どもが歓迎されていないようにさえ感じるのは、私だけではないはずだ。

欲しい福祉サービスや助成金などは多々あるが、願って止まないのは、日本が「子どもが社会に歓迎されている」と感じられる国になること。働きながら子どもを育てることが当たり前。そしてそれが喜びである。そんな社会を待ち望んでいる。

(ライター 内藤智子)

[日経DUAL2013年12月13日掲載記事を基に再構成]

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