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救急「受け入れNG」を6割減 東京ルールの成果

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NIKKEI STYLE

 救急車が患者を搬送しようとしても、行く先々で受け入れを拒まれる――。この問題の解消を目指して、東京都は救急患者受け入れの「独自ルール」を制定。ルール化から4年で、受け入れ困難事例件数を3分の1に減らした。救急を担う医療機関が集まり、定期的に情報を交換するという地道な取り組みが実を結んだ。

2009年8月、東京都は救急患者を迅速に医療の管理下に置けるよう、地域の救急医療機関が相互に協力・連携して救急患者を受け入れる取り組みとして「救急医療の東京ルール」の運用を開始した。

患者受け入れ体制の整備や、患者の重症度や緊急性などを勘案して搬送の優先順序などを決める「トリアージ」の実施などが盛り込まれるとともに、地域の救急関係者が一堂に会する会議を開催することが義務づけられた。「ルール」の運用開始から4年、関係者は成功の感触を得ている。

救急医療の東京ルールとは、搬送先選定困難事例、いわゆる「たらい回し」の事案を二次医療圏(複数の市町村を単位とした、一般的な入院治療に対応できるように定められた区域)内で受け止めることなどを目的に定められた、東京都の二次救急医療体制上のルールだ(表1)。二次救急医療とは、入院や手術が必要な中等症~重症の患者に対応するための救急医療を指す。

東京ルールは、救急患者の迅速な受け入れ(ルールI)、「トリアージ」の実施(ルールII)、都民の理解と参画(ルールIII)を3本柱としている。このルールでは、「原則中等症以下で、救急隊による医療機関選定において、5医療機関への受入照会または選定開始から20分程度以上経過しても搬送先が決定しない患者」を搬送困難患者と定義した。

中核となるルールIの具体策として、東京都は、各二次医療圏に地域で中心的な役割を果たす救急医療機関「東京都地域救急医療センター」を数カ所設置した。地域救急医療センターには、365日地域救急医療センターとして機能する「固定型」と、持ち回りで月に数回地域救急医療センターとして機能する「当番型」の2種類がある。また、圏域内で患者を受け入れられない場合に圏域を超えて受け入れ先を調整する「救急患者受け入れコーディネーター」が東京消防庁内に配置されることとなった。

具体的な流れは以下の通りだ。東京ルール事案が発生した場合、救急隊はまずこの地域救急医療センターに連絡し、東京ルール事案の発生と患者の状況を伝える。地域救急医療センターは、可能な限り患者を受け入れる。どうしても受け入れられない場合は、救急隊と手分けをして受け入れ先の医療機関選定に当たる。圏域内での受け入れが困難になった場合は、救急患者受け入れコーディネーターが他圏域の地域救急医療センターと協力し受け入れ先の調整を開始する。

このように、(1)可能な限り患者を受け入れる地域救急医療センターを定めること、(2)救急隊、地域救急医療センター、東京消防庁指令室の3者が同時に受け入れ先選定に関わることで、できるだけ速やかに患者を医療機関に収容する仕組みだ。

「搬送困難」患者数が3分の1に

東京都では、医療機関が救急隊の要請により患者を受け入れる割合を示す「応需率」が、他の自治体に比べて低い傾向があった。2008年当時、東京都の搬送先選定困難患者(救急隊が医療機関選定を開始してから30分以上、または5医療機関以上に要請した事例)は、3万5746件発生しており、東京都の全救急搬送事例58万3082件の6.1%を占めていた。

応需率が低い理由について、区東北部保健医療圏の地域救急医療センターの1つである平成立石病院(東京都葛飾区)理事長の猪口正孝氏は、こう解説する。「地方では、二次救急医療機関が圏域に1つしかない場合もある。こうした地域では、病院の責任感はおのずと大きくなり、応需率も高くなる。しかし東京都は医療機関数が多く、当事者意識を持ちにくい。さらに、当直医が受け入れ要請を受けた際に、患者の症状が自身の専門科目から離れていると、専門医がいる他院に搬送された方が患者の利益になると考え断ってしまう場合もある」

しかし、東京ルール運用後の2012年中の搬送先選定困難患者(救急隊による医療機関選定において、5医療機関への要請または20分以上経過しても搬送先医療機関が決定しない事例)は、全救急搬送数が64万9429件と増加する中、1万4449件(2.2%)にとどまり、2008年に比べ3分の1程度まで低下した。「搬送先選定困難患者を減らす」という東京ルールの目的は、ほぼ達成されているとみてよいだろう。

この成功の要因として、猪口氏をはじめ多くの関係者が「地域救急会議」を挙げる。地域救急会議とは、各圏域に定められた幹事病院が中心となって地域の二次救急医療機関を集め、東京ルールの運用や救急医療に関する課題について検討、意見交換する会議のことだ。基本的に全ての圏域が年に3~4回開催する。地域の二次救急医療機関や東京都、東京消防庁に加え、圏域によっては警察や自治体の福祉部門なども参加する。

東京消防庁の関係者も、「会議によって地域の絆が深まり、圏域内の患者は圏域内で何とかしようという機運が培われていることを実感している」と肯定的だ。実際に、搬送先選定困難患者の圏域内受け入れ率は、2008年時点で49.3%と半数程度だった。しかし運用開始後の2011年には81.3%に上昇し、多くが圏域内で受け入れられるようになったのだ。

 特に、東京都指定二次救急医療機関を20施設有する「区南部保健医療圏」では、圏域内受け入れ率が9割以上と、最も高い。この成果について区南部保健医療圏で、固定型の地域救急医療センターに指定されている大田病院(東京都大田区)院長の田村直氏は、「東京ルールの開始に伴って開催されるようになった地域救急会議で数字を出しながら積極的な受け入れを呼びかけ続けたことで、自分の圏域内で発生した東京ルール事案は、圏域内で受け入れようという連帯感の機運が高まったと感じている」と言う。

依然短縮しない救急搬送時間

ここまでであれば東京ルールの成果は十分に上がっているように思えるが、猪口氏は「ある程度の成功」と控えめに表現する。搬送先選定困難患者は減ったものの、救急搬送時間は未だ短縮に結びついていないからだ。

実は、東京ルールの運用が開始された2009年以降も、救急搬送時間全体は伸び続けている。2009年には50.1分だったが、翌2010年には52.7分、2011年には53.0分となった。全国平均が過去最悪を更新した2012年中の救急搬送時間でも東京はワースト1位で、54.9分となっている(2009~2011年の救急搬送時間は119通報の電話を終えて東京消防庁が救急搬送患者の発生を確認した時点から、2012年は119通報の電話を取った時点から計測開始)。

状況を悪化させた要因はさまざまだが、救急搬送患者の増加と医療機関の減少が真っ先に挙げられる。東京都の搬送患者数は48万139人だった1998年に比べ、2012年には64万9429人と35.3%も増加している。一方で、救急医療機関は1998年には411施設あったが、2012年には322施設と21.7%減少しているのだ。

搬送時間全体の短縮は、東京ルールの徹底だけでは難しい。前述の通り、東京ルール対象患者の発生数は1日あたり40件程度で全救急搬送数の2%程度。東京ルール対象患者が減少しても、全体の搬送時間の平均に与える影響は大きくない。

それでも田村氏は、「搬送時間に反映されていないため、成功と言い切れるかは分からないが、東京ルールの開始以降、状況が後退しているということはない。会議で医療機関の連携を強め、改善を続けて東京ルール事案の発生を未然に防ぐことで、今後救急搬送時間自体も短縮させていければ」と期待を込める。

精神科症状患者のバックアップ体制を確保

そこで東京都は、東京ルール運用後も地域救急会議で出された課題や意見に対応する改善を続けている。2011年6月から2012年5月まで、東京都は同ルールの対象となった患者の状態や症状などを抽出・分析した(図1)。ここで明らかになったのは、整形外科的な症状や精神科的症状を有する場合、酩酊(めいてい)状態や住所不定といった要素を持つ場合に東京ルール事案になりやすいということだ。

こういった状況への対策の1例が、東京ルール事案の精神疾患を合併する傷病者の受け入れ先医療機関を確保する事業だ。2011年12月から運用を開始している。これは、東京ルールで受け入れた病院で治療した後、身体的治療と併せて精神疾患の治療が必要な患者については、国立国際医療研究センターに相談し、必要に応じて患者の転送を行う制度だ。田村氏は、「アドバイスを得られると思えば、精神疾患を有する患者を受け入れるハードルが下がる」と感じている。

 2012年10月からは、東京ルールの対象傷病者を拡大した。従来の対象は「中等症以下」という制限があったため、重症の患者は東京ルールの適用対象から外れていた。重症患者は通常、救急救命センターに搬送されるが、がん末期や終末期の高齢者など、患者や家族が延命を望まない場合には必ずしも搬送対象にならず、搬送先選定困難患者となることがあったからだ。

他にも、救急隊が観察カードに基づき重症以上と判断した場合であっても救急隊指導医の医学的助言を受けて二次救急医療機関を選定する場合などは、東京ルールを適用できるようにルールを改変した。

東京消防庁の関係者は、「対象拡大前は東京ルールを適用することもできず、搬送先も決まらない、いわば制度の隙間に落ちてしまっていた事案を救済できるようになった」と改善面を強調する。

また、地域救急会議の結果、圏域内で独自に搬送困難患者の問題に取り組んでいるケースもある。平成立石病院が会議の幹事病院を務める区東北部保健医療圏では、「特に夜間は、整形外科的処置が必要な患者が東京ルール事案になりやすい。夜間帯に整形外科医が当直する病院を少なくとも1つは当番表に組み入れることで、東京ルール扱いとなる患者を減らそうとしている」という(猪口氏)。

こうした取り組みは他の医療圏域にも広がっており、「搬送先が決まらない」という救急患者の減少につながっていきそうだ。

(日経メディカル 増谷彩)

[日経メディカル Online 2014年1月30日掲載記事を基に再構成]

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