渋谷教育学園幕張 「自調自考」の姿勢を試す社会科入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(11)

身近な話題からも「情報編集力」を試す

上記では、日本史の範疇から問題を取り上げたが、社会科では時事問題や身の回りのことを題材にして出題することも多い。自調自考の姿勢を試すのにちょうど良いからだ。2014年1次の大問1では、電子レンジを題材として、電力、流通、食品生産、法律などに関する問いが出題された。電子レンジ、電気ストーブ、湯沸かしポットを同時に利用するとブレーカーが落ちて家中の電気が使えなくなるのはなぜかというような、一般常識を問う問題も含まれている。過去には同様に、テレビ、コンビニ、天気予報、高速道路、新聞、路線バスなどの生活に密着したテーマから出題されている。

「いずれも大人の目からすると一般常識的なやさしい問題に見えると思います。しかし社会の仕組みをまだ十分には理解していない子どもにとってみれば、身の回りの当たり前のことも謎だらけであるわけです。そのような謎に気付き、それを解き明かしたいと思う意欲があるかどうかを根本的には試しています。問題文自体が実はヒントになっているので、特にそれぞれのテーマについての詳しい知識を予め持っている必要はありません。問題文の中のヒントに気付き、自分の経験や知識に結び付けながら論理立てて考える思考回路がパッと回るかどうかが肝心です」

試しているのは知識量ではなく、「情報編集力」や「つなげる力」と呼ばれる能力だ。また、普段から身の回りのちょっとしたことに対しても関心を寄せ、「なんだろう?」「なんでだろう?」と考えるクセが付いている子どもを、渋幕は求めているわけである。それが自調自考のスタート地点であるからだ。

身近なテーマをもとに、問題文をヒントにして、思考を巡らせる。時間があれば楽しい作業であるようにも思われる。しかし渋幕の入試問題は分量が多い。ゆっくりと考えている時間は実際のところ、ない。「限られた時間の中で情報を正確に処理する能力」も実は見ている。つまり、全体として、渋幕の入試問題は、情報をつなげる能力と情報を素早く処理する能力の両方を試していることになる。そのように選抜されてきた子どもたちが、実際に渋幕で自調自考の訓練をくり返す。

その成果がたとえば高2の秋に各自提出する「自調自考論文」である。優秀作品集を見せてもらった。仕事柄、いろいろな学校の論集や文集を見ることがあるが、渋幕の「自調自考優秀作品集」はずば抜けてハイレベルだと感じる。それを見れば、渋幕の「自調自考」は伊達ではないことはわかる。その成果が、大学進学実績にも結び付いているのであろう。

「渋幕の奇跡」の本質を見た。

DATA

渋谷教育学園幕張中学・高等学校
http://www.shibumaku.jp
・募集定員 男女280人(帰国生約20人を含む)
・入試日 1月22日、2月2日
・所在地 千葉県千葉市
・最寄り駅 JR京葉線「海浜幕張」から徒歩約10分
おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、私立小学校での教員経験もある。著書に『中学受験という選択』(日本経済新聞出版社)、『生きる力ってなんですか?』(日経BP社)、『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』(ダイヤモンド社)などがある。

(構成 日経キッズプラス)

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