ライフコラム

子どもの学び

渋谷教育学園幕張 「自調自考」の姿勢を試す社会科 入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(11)

2014/7/8

私にはその知識がなかったので、ヒントがヒントとしての機能を果たしてくれなかったわけである。しかし改めて調べてみると、富岡製糸場が開業したのが1872年。受験生ならそれは習っているはずだ。

「2番目は動力源がヒントです。蒸気力を用いるのが実は紡績業の特徴です。ちなみに製糸業は、このころには手動力や水力を利用していました。そのどちらかだけでも知っていれば、ヒントとして利用できるのです」

私はどちらも知らなかった。

「それは知らなくてもいいんです。受験生はよく勘違いしてしまうのですけど、全部のヒントを使い切る必要はないんです。いくつかのヒントがあるわけです。どれかに関連する知識を頭の中から引っ張ってきて結び付けることができれば正解にたどり着けるように作問していますから」

一つの知識を持っているかどうかで正解不正解が決まるのではない。利用できる知識を総動員することで、少しでも正解に近づけるようになっているのだ。

「でも実は、表だけからでも製糸業ではないということを読み取ることもできます。1889年から輸出がはじまっていることがわかるでしょう。その時点で製糸業という選択肢はあり得ないんです。生糸は、開国してすぐに重要な輸出品となっていましたから。それだけで答えを書いてくれてもいいんです」

与えられた情報の中から、自分なりのヒントを見付ければいい。社会の問題でありながら、何種類かの解き方があるというのはユニークだし、奥が深い。

■必要な情報を過不足なく伝える力も見る

「答えが紡績業であるということまでわかって、やっと20字で説明するという段階にいたります」

まだ正解にはたどり着いていないのである。紡績業とは、何を原料にして、何をつくる産業なのかを説明しなければいけない。原料は綿花、製品は綿糸である。正しい単語を知っていることがここでは大切になる。学校としての模範解答は公開していないが、およそ次のようになるはずだ。

<模範解答>

綿花を原料として綿糸を作る紡績業である。(20文字)

「部分点もあげていますが、原料と製品と産業名が20文字の中に含まれていることが満点の条件です」

与えられた情報の中からひっかかりとなることころ、あるいはヒントになるものを見つけ出す。それらを結び付け、自分なりに考察し、できるだけ正解に近づく。ここで知識を活用する力、いわゆる「活用型学力」が試されるわけだ。そして最後は必要な情報を過不足なく盛り込む表現力が求められる。この一連のプロセスができて、本当の正解にいたることができる。

要するに、「気付く」→「情報処理」→「考察・理解」→「表現」。これこそが、渋幕が標榜する自調自考のプロセスにほかならないのだ。

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