40代になったら 夫が知っておくべき妻の「がん」
日経ヘルス・フォーメン
今や16人に1人がかかるといわれる乳がんは、実は40~50代が罹患(りかん)のピークなのだ。もし、妻が乳がんだと宣告されたら夫はどうしたらいいのか。
「乳がんは進行度やタイプだけでなく、40代前半までの女性にとっては近い将来妊娠を希望するかどうかで、治療方法が大きく異なることもある。妻、医師と三者で納得いくまで話し合って治療方針を決めてほしい」というのは、保健会館クリニック・乳腺外科医の坂佳奈子さん。乳がんは、「初期段階の自覚症状がなく、検診による早期発見が特に大切」(坂さん)。
同様に、40代以降の女性の罹患(りかん)率が高いのが「子宮体がん」。不正出血が初期症状のサインだが、更年期に起こりやすい生理不順と思い込み、放置したままでがんの進行を早めることも多いという。
「不正出血があればすぐに受診を。子宮体がんだとしても、早期発見で外科手術を行えば、ほぼ確実に治ります」(東峯婦人クリニック院長の松峯寿美さん)。
~乳がん・子宮がんで夫が知っておくべきこと~
【乳がん】「 要精密検査」が出ても慌てる必要はない
一般的に乳がん検診で「要精密検査」になるのは、全受診者の5~10%。さらに最終的にがんと診断される人はその中の約3%。つまり1000人中3人程度。必要以上に恐れる必要はない。ただ「がんを宣告されたら怖い」と精密検査を受けないのはダメ!
●腫瘍の大きさによって、切除した方がいいのか、温存できるのかが違う。
(日本の乳がんのガイドラインでは、乳房温存術の適応は、しこりの大きさを原則3cm以下としている)
● 乳房切除術をしても、術後に失われた乳房・乳首を人工的に再建することが可能。
【子宮がん】子宮がんは2種類
子宮頸部(膣に近いところ)にできるがん。性感染するウイルス(HPV)が発生にかかわっている。20~30代の若い女性に多いが、それ以上でも発症する。今は若い時期に打つと効果的な予防ワクチンがある。
子宮体がん
子宮頸部より奥にある子宮体部にできるがん。ホルモンバランスが崩れる閉経前後、40~50 代に多く見られる。初期症状として不正出血がある場合が多い。予防ワクチンはない。
普通、自治体で行われる「子宮がん検診」といえば、「子宮頸がん検診」のこと。40歳を過ぎたらそれとは別に「子宮体がん検診」も必ず受けることが大切。40代以降の女性が特に気をつけたいのは「子宮体がん」。不正出血があればとにかく早く受診を。
~「 乳がん」「子宮がん」の妻に夫ができること 「 家事とお金」の心配をさせない~
2年に一度は必ず「がん検診」を受けさせる
乳がんの場合、「最低でも2年に一度のマンモグラフィの検診は必ず受けてほしい」(坂さん)。自己触診でしこりがわかるころには、大きさは2cmを超え、すでに早期がんではなくなっている。初期のごく小さいがんや、しこりを作らないがんはマンモグラフィでしかわからない。
「更年期に入ったら、特に病気の自覚症状がなくても2~3年に一度のレディースチェックがお薦め。子宮頸がん、子宮体がんだけでなく、子宮筋腫や卵巣がん、乳腺の状態、骨密度などもわかります」(松峯さん)。
「費用の不安」をさせない
乳がんは比較的治療期間が長く、費用もかかる。薬によってはひと月約30万円もかかる場合がある。子宮体がんは、子宮全摘出手術で、入院費用の総額が60万~100万円になることも。
家のローンや子どもの教育費など出費がかさむこの時期に、治療費もかかるのは厳しいが、妻には費用を心配させない気遣いを。「特に専業主婦は、自分にお金を使うことを心苦しく思い、検診の費用でさえ言い出せない場合も多い。夫から"検診受けたら?"といわれれば安心できるはずです」(坂さん)。
検査結果や病状をしっかり把握し、妻、主治医とのコミュニケーションをとる
「男だから、乳がんや子宮がんのことはわからない」と、妻と主治医にすべてを任せ、ノータッチでいるのは無責任。治療の過程には、人生の選択や決断を迫られる場面が多く、それを妻が一人で背負うのは荷が重すぎる。
「妻の命にかかわる大事な治療なのだから、できるだけ検査や診察にも付き添って、妻、主治医と三者で納得するまで話し合って。妻が主治医にいいにくいことがあれば、夫が橋渡しをすることで、三者の意思疎通がうまくいくし、夫婦の信頼感も増すでしょう」(坂さん)。
妻の心中を察して、いたわる言葉を
妻ががんになれば、夫も以前にも増して心身ともに疲れるし、将来に対して悲観的になったりすることもあるだろう。だけど、一番つらいのは、やはり妻本人なのだ。
「家族を悲しませ、迷惑をかけていることに妻は大きな負い目を持っています。その気持ちを一番わかってあげられるのは夫。気持ちを吐き出せる相手がいることは、妻の大きな心の支えになります」(松峯さん)。
ただし、励ますつもりの「頑張れ」は注意。「これ以上なにをどうがんばれというのか」とさらに落ち込ませてしまうこともある。
妻の「家事への心配」を取り除く
入院はもちろん、通院での治療でも、妻は家事ができないか、日常以下になるのは必至。
「特に子どものいる家庭では、妻の家事の心配は大きい。思うように家事ができないことで、とても申しわけない気持ちになっています」(坂さん)。
子どもがある程度大きいなら、家事は家族で分担して協力しあうこともできる。子どもが小さければ、近所の助けを借りる、家事代行サービスに頼るという方法もある。家事の心配を取り除き、妻が治療に専念できる状況を作ることが大切だ。
(ライター 船木麻里)
[日経ヘルス・フォーメン2012年春号の記事を基に再構成]
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/198820.html
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