働き方・学び方

集まれ!ほっとエイジ

「ぎりぎりの難しさ」が頭を刺激 シニアのための脳トレ術 東北大学教授 川島隆太氏

2012/9/7

健康な高齢者には易しい教材を用意して、ぎりぎりの難しさをつくり出すために、時間を意識してもらいます。できるだけ早くというプレッシャーをかけます。それで、ぎりぎりの難しさをつくり出すのです。

認知症は医療では治せないと言われていますが、作動記憶トレーニングを学習療法の読み書き計算という形で行うと、よくなる人がたくさん出てきています。

しゃべれなかった方が、まず笑顔が出るようになって、その後にしゃべるようになりました。何をしてほしいのかすら言えなかった認知症の患者が、身体が痛い、トイレに行きたいとおっしゃる。介護は一時的に大変になりますが、そこを過ぎると、介護をする人が忙しいのだということも理解できるようになって、介護者の手の空いているときを見計らって、「すみません、トイレに連れていってください」と言うようになる。

■読み書き計算で認知症が改善することも

――軽度な認知症だけでなくてある程度、症状が重くなってからも改善するのですか。

川島 はい。軽い人たちは、すっかり昔のお父さん、お母さんに戻る方がたくさんいらっしゃいますし、重い方は、自立できる程度になる方がたくさんいらっしゃいます。

――症状が重くてもトレーニングを自発的にやってくださるものなのですか。

川島 我々、子どものころはドリルは嫌なものと思っていたのですが、認知症の方にやっていただくと目がきらきら輝き、やりたくてやりたくて仕方がないとおっしゃる。学習療法の時間になると、みなさん自分で部屋から出てきて学習室の前で待っていらっしゃる。

■ペットや料理、機能「伸ばす」効果はない

――スタッフと一緒に料理をしたりペットに触れたりすると効果があるといったことを聞いたことがありますが。

川島 いろんなアクティビティーがあって、ペットに触れたり、グループホームのなかで料理を作ったりするというものもあります。これらは脳を使いますから脳を刺激するんですが、致命的な欠陥があります。「ぎりぎりの難しさ」のトレーニングができないんです。だから、悪くなるのを緩やかにする効果はあっても、いろいろな機能を伸ばして良くする効果はありません。

――一般の高齢者が例えば英語を勉強するとします。自分のレベルに合わせ、英単語の8割くらいが分かる文章をどんどん読んでいくようなことをすれば効果はありますか。

川島 学びというのは自分ができるぎりぎりの難しさで作動記憶トレーニングができますから、それを生涯学習として楽しまれるというのは脳の健康には明らかにいいです。ぎりぎりの難しさを意識してつくり出せばなんでもいい。例えば今、書写などが流行っていますよね。お経を写したり新聞のコラムを書き写したり。ぎりぎりの難しさをつくろうと思ったら、ある程度覚えられるだけ覚えて書き写していく。毎日覚える量を増やしていきながら書き写そうとすると、これはぎりぎりの難しさのトレーニングになるわけです。

――手を使う例が多いようですが、パソコンを使うのはだめですか。

川島 パソコンを使うと脳は鍛えられません。パソコンは情報処理を補助する装置なんです。パソコンを使ったら自分の頭はあまり使わないというのは当たり前の話です。いまの時代は、身体も脳もあまり使わないようにして、楽で便利な状態をつくり出している。これにどっぷりつかっていると、老化による機能低下は昔の人よりも明らかに早くなるでしょう。こういう便利な時代だからこそ、脳や身体を使うという生活スタイルが必要になってくるのです。

(ラジオNIKKEIプロデューサー 相川浩之)

[ラジオNIKKEI「集まれ!ほっとエイジ」8月2日、9日放送の番組を基に再構成]

「集まれ!ほっとエイジ」(ベネッセスタイルケア、野村證券提供)は、変化を恐れない果敢なシニアたち=ほっとエイジが、超高齢社会をどう生き抜くか、を考えるラジオNIKKEIの番組(http://www.radionikkei.jp/hot-age/)。月曜日が、ライフワークに生涯を捧げることを提案する「目指せ!生涯現役」。火曜日が、学校では教えてくれない親の介護、マネープラン、人生90年時代の人生設計を学べる「シニア予備校」。水曜日が、介護サービスを検証するとともに、どんなシニア向けビジネスに可能性があるのかを探る「シニアビジネス研究所」。木曜日が、どうすれば幸せな長寿社会を生きられるかを考える「理想の長寿社会を語ろう」。バックナンバーはネットで聴くことができます。キャスターは相川浩之、町亞聖(月~水)、大宮杜喜子(木)。

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