無保険者に医療を 米国の学生が挑む「無料」診療所米国NPの診察日記 緒方さやか

2014/4/25
日経メディカルオンライン

米国の医療機関などで働きながら、出産・育児を経験した著者が、仕事・出産・子育て・文化の違いなど、さまざまな切り口で、米国社会とそこで働く女性の現状を紹介。読めばリアルな米国が見えてきます。さて、今回は米国の大学生たちによって運営される「フリークリニック」を取り上げます。

「先月に続いて血圧が非常に高いままなので、生活指導に加えて、薬を処方した方がいいと思います」。私がこう報告すると、監督をしているナースプラクティショナー(NP)は皆を見回して、「例えば、どの薬?」と尋ねた。

「空腹時血糖値が102で、近い将来糖尿病になる可能性も考えると、ACE阻害薬が良いのではないでしょうか?」

「患者は40代女性で、妊娠する可能性もあることを考慮すると、ACE阻害薬は避けた方がいいと思います。 カルシウム拮抗薬の方が良いのでは?」

「カルシウム拮抗剤は、一番安くても1カ月15ドルほどかかるので、4ドルで済むヒドロクロロチアジドは?」

「ヒドロクロロチアジドじゃあ、血糖値がますます上がってしまいます」

「ACE阻害薬も4ドルで売っています。患者さんは本当に妊娠する可能性があるんでしょうか? パートナーがいるかどうか、避妊手術をしているかどうか、聞いてみては?」

「でも、ACE阻害薬だと、カリウムとクレアチニンを数週間後に調べなければいけないですよね。その血液検査は何ドルくらいかかるんでしょうか……」

彼らは全員、医師、NP、医師助手(PA)を目指すイェール大学の大学院生。毎週土曜日の「フリークリニック」では、いつもこのような熱いディスカッションが交わされていた。

オバマ米政権の看板政策である医療保険制度改革法(オバマケア)。医療保険に入っていない低所得者も、ネットを通じて手ごろな保険に申し込めるのが売りだが、国内には反対意見もある=ゲッティ共同

学生たちによって運営されるこのクリニックでは、地域の診療所を毎週土曜日の数時間だけ開放し、貧困層かつ保険を持っていない人を無料で診ていた。主に、不法移民やホームレスの患者さんたちだ。公衆衛生大学院生たちが受付の担当係やスペイン語の通訳を担い、診察を担当するのは、医学生の3~4年生(メディカルスクールは4年間)か、NPかPA学生の2年生(NP/PA講座は2年間)たち。それ以外の学年の学生は、バイタルサインを取ったり、患者を診察室に案内したりして、いわゆるメディカルアシスタントの役割を担う。だから、NP学生が診察担当で、アシスタントが医学生であることも、その逆もある。

なにしろ学生なので、病歴を聞くのも診察をするのも時間がかかり、監督に相談してはフィジカルアセスメントをやり直したりするので、1人の患者さんに1時間以上かけるのもまれではなかった。学生として、手探りながらも一生懸命診察をする私たちを、患者さんたちは暖かい目で見てくれていたように思う。

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