「おおかみこども」が海外でも高評価、細田守監督ヒットメーカー 2012~13(1)日経エンタテインメント!

2012年、マンガ原作やドラマ、アニメシリーズの劇場版が人気を集めたなか、邦画興収上位10作品中、唯一、完全オリジナルで大ヒットしたのが、スタジオ地図第1回作品の「おおかみこどもの雨と雪」(細田守監督)。おおかみおとこと恋をして、生まれた子どもたちを育てる「母親」が主人公。アニメでは異例の設定にもかかわらず、邦画で興収5位にランクイン。国内だけでなく、昨夏のフランス上映を皮切りに海外45カ国での公開が決定するなど、海外でも高く評価された。

「映画を見たい」と思わせるには、俳優のキャスティングや原作人気なども影響するが、アニメのオリジナル映画はどちらの要素もない。純粋に、演出・作品の力で“見たい監督”として細田ブランドが確立されたといえるだろう。難しいオリジナル企画を実現し、作品としてまとめあげたポイントは何だったのか?

細田 オリジナルにこだわって積み上げてきたというより、面白い映画ができるのであれば、原作があろうがオリジナルであろうが、どちらでもいいと思っているんです。

オリジナルのアニメーション映画「おおかみこどもの雨と雪」(2012年7月公開/東宝配給)で、「ヒット・メーカー・オブ・ザ・イヤー」のグランプリを受賞したアニメーション映画監督の細田守さん。(写真:中川真理子)

目新しさやほかと違うアピールを考えると、前作の「サマーウォーズ」(2009年公開)は“親せきが主人公のアクション映画”なのですが、世の中にそんな原作はないですよね。「おおかみこども~」は“子育てするお母さんが主役の映画”で、これもあるようでなかった話。つまり、面白い映画を作るのが目的で、その要素を突き詰めた結果、僕が考える面白さを持つ原作がなかったのでオリジナルで作ることになった、というわけなんです。

原作があっても映画が難しいのは、小説で描かれた量と映画で見せられるボリュームの差があること。映画にできる量は、文庫本だと1冊の3分の1から半分が限界。それを超えると削らなければならないし、削った瞬間、原作の良さが反映できているか気になって。「時をかける少女」(2006年公開)は中編だから良かったのだと思います。

 

細田氏がよりこだわるのは、コンセプトが多くの人に共感してもらえるかどうかということだ。

細田 企画が成立するかは、面白いと思ったコンセプトがプロデューサーやスタッフにも面白いと思ってもらえるかが重要です。一緒に作る彼らが面白いと思えなければ、観客にも伝わらないでしょう。

大事なのは共感してもらえること。そのため、映画にすべき企画はものすごく身近なところから発想します。「サマーウォーズ」も「おおかみこども~」もそうですが、奥さんと夕食のときにしゃべっている話題のなかに題材があったんですよ。妻との会話って、ビジネスやエンターテインメントとは遠い印象ですが、そこには多くの人に共通する“種”が潜んでいる気がします。その話をプロデューサーにして、「うちの奥さんの場合…」って乗ってくるときは特に(笑)。なので企画会議も身近な話題ばかり。誰もが感じているのに身近すぎて気がつかない大事さを、面白く見せる発見が重要なのだと思います。

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