12月に鼻水があった人は要注意 今シーズンの花粉症対策
日経ヘルス編集長 藤井省吾の「健康時評」
2月に入り、いよいよ花粉症のシーズンが迫ってきた。日本気象協会の発表によると、首都圏の花粉飛散開始日は2月15日前後とされる(イラスト参照)。
飛散するスギ花粉の量は2011年に比べるとかなり少ないが、例年並みと予想されている。大量飛散だった昨年、震災のストレスが体に及ぼす影響なのか、「症状が軽かった」という人もいたが、大量の花粉にさらされたことは事実。その影響が、今シーズンに出る人もいるので、早めから対策を始めたい。
かくいう筆者自身、スギ花粉に対するIgE抗体の抗体価が高く、とても過敏な花粉症患者だ。医療雑誌『日経メディカル』、健康雑誌『日経ヘルス』の取材、編集をしつつ、花粉症に対する最良の備えをいつも考えてきた。その一端を交えつつ、今からやるべき対策について、お伝えしたい。
■水のような鼻水が12月にあった そんな人は早めに病院へ
まず、早めに花粉症対策をしていただきたいのが、昨年の12月ごろに、ときおり水のような鼻水が出る症状が出ていた人だ。花粉症に詳しい日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科の大久保公裕教授によると、12月でよく晴れた暖かい日に、わずかだがスギの花が開き、そこから花粉が飛ぶのだという。そのため私を含めて、花粉に敏感な人の場合、水のような鼻水がすーっと突然出るとういう症状が起こる。
12月にかぜ気味で鼻水が出たと考えた人もいるかもしれないが、花粉症などのアレルギー性鼻炎の鼻水は「水のようで、粘りがない」のが特徴。かぜのときとは少し違うので、区別がつく。
こうした人は、微量の花粉に対しても敏感なので、花粉の飛散開始日より先に、医療機関に行って、早めに医療用医薬品の飲み薬や点鼻薬で対処したほうがいい。わたしもすでにクリニックで処方箋をいただいて薬を準備している。
次は飛散日のころから症状が出るという人。このタイプの人で、症状が軽い人に関しては、今シーズンから選択肢が増えた。市販の医薬品にも、スイッチOTCなど副作用が少なくて、症状を抑えこむ力が強いものが増えたからだ。
例を挙げると、1日1回飲むだけでいい眠気の少ないアレルギー用の「アレジオン10」や、ステロイド配合で鼻づまり、鼻水を押さえる点鼻薬などが市販薬としても購入できる。すぐに医療機関にかかれない場合は、これらの市販薬で症状を抑えて、時間ができたときに医療機関にかかるという方法もある。
~2012年シーズンの医療用医薬品と市販薬~
■花粉症対策の基本はマスク メガネと帽子も有効
さて、薬のことから花粉症対策を説明したが、現実的に症状を軽くするためには、マスクや花粉よけのメガネ、帽子などが効果的だ。インフルエンザなどの感染予防とは異なり、どのタイプのマスクでも鼻や口の上に隙間ができなければ、花粉をよける効果は十分だ。
目の症状がつらい人にお薦めなのが、花粉対策用に作られたメガネ。従来はものものしいデザインだったが、普段のメガネとそう変わらない違和感のないデザインのものが増えた。わたしも、愛用している。
ところが、これらのメガネでも顔との間の隙間から、スギ花粉が入ってくることがある。その対策として、ひさしのある帽子(野球帽)などをかぶると、目に対する花粉のガードはより確かになる。わたし自身、マスクにメガネにサンバイザーという格好で、休日はジョギングをしているが、ここまで防御すると、ジョギング後でも症状はほとんど出ない。ただし、すれ違う外国人のジョガーに不思議な顔をされてしまうことだけ付け加えたい。
なお、今年のスギ花粉には放射性物質が付着していると、危惧する声もある。林野庁は昨年、福島県で採取したスギ雄花の放射性セシウム濃度を調査し、「現在検出されている程度のセシウム濃度であれば、吸い込んでも被曝の心配はないレベル」という見解を発表している。ただし、それでも気になるという人もいる。花粉症の症状を軽くするためにも、外出時はマスクを着用するのが良さそうだ。
日経ヘルス編集長。東京大学大学院(農学系)を修了。1991年に医師向けの専門雑誌『日経メディカル』の記者として取材をスタート、98年からの『日経ヘルス』記者生活でも、医学と科学をベースに取材・編集を担当。08年から現職。
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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