扁桃体の反応速度は驚異的に速い。本人がなぜ驚いたのかわかるより前に、体が反応していることもあるほど。ただ、「ここは安全」と状況判断できるような環境では、前頭前野が自動的に扁桃体にブレーキをかける

例えば、ふと目の前に、ヘビのようなものが見えたとする。「ヘビだ」と意識が気づくより早く、映像が目に飛び込んでわずか40ミリ秒後には、扁桃体が興奮している。「これはやばいぞ!」と評価したのだ。

その結果、体はとっさに逃避体勢をとる。同時に、心の中に嫌悪感という感情がこみ上げる。それで私たちは「ぎゃっ!」と叫んで飛び退くことになる。

つまり感情とは、扁桃体が下した評価を体に伝えるメッセージ。命に関わるような大事な判断を伝えているのだ。ヘビの場合は嫌悪感だが、空腹時に食べ物を見たような場合なら、幸せな感情が湧いてくる。

扁桃体の反応は、スピード優先。あとでよく見たら、実はヘビのおもちゃだと気づくこともあるけれど、本当に毒ヘビだった場合のリスクに比べたら、その程度のミスは問題にならない。生き物のしくみとしては、何より生存が優先なのだ。「人生では、大事な決断をしなくてはいけないけれど、判断の材料が乏しいという場合があるでしょう」と大平さん。「頭でいくら考えても、どちらが正しいとも言えない。そんなときは、“好き、嫌い”のような感情に任せると、扁桃体がけっこういい判断をしてくれますよ」。

なるほど~。感情の重要性はわかった。とはいえ、いつも感情のままに振る舞うわけにもいかない。感情をコントロールするしくみもあるはずだ。

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扁桃体の興奮を抑える前頭前野の働き
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