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 良かれと思ってやっているのに、頑張っているのに、うまくいかない。いったいどうすればいいのか? 3回目は部下の指導に悩む上司に、アクションラーニングソリューションズの斉藤秀樹氏がアドバイスします。

【相談】 過去の成功体験、武勇伝を語るほどメンバーたちのやる気が失せていく

 私はこの会社に勤めて15年になります。実に様々なことがありました。特に思い出されるのは、入社2年目の試練です。オフィス用プリンターの飛び込み営業を続ける毎日でしたが、なかなか結果が出ませんでした。そこで私は、プリンターを売るのではなく、印刷に関するトラブルを解決するアプローチに切り替えたのです。これで成約に結び付いたケースはいくつもあります。10年目も転機でした。そのころ私は、新しい小型のプリンターの販売部門に所属。こういった小さなプリンターは、女性に使ってもらおうと考え、様々な手を打ちました。中でも、当時人気の男性アイドルを広告に起用したのが決定打でした。その結果当初の予測を上回る成果が出ました。私は若手に対して、ことあるごとにこの話をし、「まずは印刷の苦労を聞いて回れ」「有名人の起用は効果的だ」と言っているのですが、反応は芳しくありません。私が語っていることは経験に基づいた事実です。思えば私も、上司や先輩の成功談を聞きながら、それをまねたことも少なくありません。今の若手にも、謙虚に学ぶ姿勢を身につけてほしいのですが。

何が問題なのかは明白です。この相談者の経験談に、ニーズがないのです。つまり、メンバーは、そんな話を聞きたいとは思っていないということです。

過去と現在とでは、様々な条件が異なっています。それなのに、過去の話を繰り返すのは「この薬は自分には効いたので、飲むといい」と、その人が何の病気であるかに頓着せず、闇雲に薬を勧めるようなものです。しかし、ここですべきことはこれではありません。目の前の人は何の病気であるのかを、把握するのが第一歩です。

リーダーの役割は、自分のコピーを作ることではありません。仮にそうだとしても、コピーなどつくりようがありません。ではリーダーの役割とは何かというと、部下が現実をどのようにとらえているのかを、具体的に理解することです。

そのためには、自分の先入観をいったん脇に置き、部下が見ている現実、部下が考える課題、解決のためのアイデア(ない場合も多い)、そして上司には何をしてほしいのか、支援内容を徹底的に聞くことです。

このヒアリングは、部下のためにもなります。ヒアリングに答える過程で頭の中が整理され、自ら解決のヒントに気づくことも多々あるのです。部下は、自分で気づいたことには素直に、そして自発的に取り組みます。気づきは人間の行動変容の源泉なのです。その境地に部下を導くことも、上司の役目です。

もし、ヒアリングで気づきが生まれなければ、目標を再確認します。適切な行動が取れないのは、目標認識が誤っているからです。

多くのリーダーは、ビジョンにせよ目標にせよ、言いっぱなしになりがちです。言うだけで、正しく理解できているかというと、そんなことはありません。目標の理解にすれ違いがある状況では、上司の思う行動を、部下が取れなくて当たり前です。ところが、多くの上司は、目標の再確認というプロセスを飛ばして、部下の行動だけを変えようとします。これでは、うまくいくはずがありません。また、目的の確認方法にも作法があります。よく、上司が説明をし、部下に同意を求めるシーンを目にしますが、これは確認とは言えません。

自分が若かった時代を思い出してください。上司の説明に「分からない」「違うと思う」とはっきり言える部下がどれだけいるでしょう。

あなたの説明に「YES」と答えている部下が、本当に理解しているとは限りません。ですから上司の皆さんは、部下に対して説明をした後には、必ず質問をしてください。重要なポイントについて質問をすることで、部下の言葉で回答を受けられます。その達成の意味や意義についてさらに補足していくのです。

これによって目標や上司が求める意図が部下に腹落ちし、適切な行動が生まれます。

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