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授乳の悩みも、コンサルタントに相談が米国流

米国NPの診察日記 緒方さやか

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NIKKEI STYLE

 米国の医療機関などで働きながら、出産・育児を経験した著者が、仕事・出産・子育て・文化の違いなど、さまざまな切り口で、米国社会とそこで働く女性の現状を紹介。読めばリアルな米国が見えてきます。さて、今回取り上げるテーマは授乳。授乳の痛みに耐えかねた著者が出合った解決法とは?

今回は、私が出産した直後の話をさせていただきたい。

赤ちゃんと自分の健康を考え、せめて産休である最初の数カ月間くらいは完全母乳で育てようと計画していた。たった2日間の入院期間中は、痛みはあるものの、うまく授乳ができているとナースに褒められていたが、退院して数日すると、乳頭に亀裂が入り、血が出るようになってしまった。授乳の時の最初の30秒ほどはまさに七転八倒の苦しみだ。それでも、2時間ごとに赤ちゃんは母乳を欲しがる。本にも乳頭の痛みについて書いてあったし、母親や妹、友人たちも、口々に授乳の痛みを語っていたのを思い出し、授乳のたびに涙を流しながらも、「これくらいは普通のはずだ」と私は思い込んでいた。

たまたま家に訪れた親しい友人Aは、自分の息子も授乳中で、「私が代わりに授乳してみようか?!」と面白い提案をしてきた。気の知れた友人で、彼女も医療者であり、エイズウイルス(HIV)も肝炎もないのは分かっているので、さて、赤ちゃんを交換してみると、息子はうれしそうに飲んでいる。「ふむ。痛くないわ。赤ちゃん側の問題じゃないのかしらね。専門家に相談した方がいいかもね」と彼女は言う。

母乳育児のコンサルタントに相談したら

その夜、「授乳の痛みと、陣痛と、どっちの方が痛いかなあ」と夫に問いかけると、「そんなふうに考えるのは、普通の痛みじゃないってことだよ。誰かにちゃんと相談しよう」と言ってくれた。そこで、ドゥーラ(出産に立ち会い妊婦やその家族をサポートするプロフェッショナル)に、おすすめのラクテーションコンサルタント(母乳育児指導者)を数人紹介してもらった。2人に電話をして、2人ともとても感じが良かったので、安易に安い方に決めた。2時間の家庭訪問1回と、その後のメールでの相談は無制限で175ドルという値段設定は、相場に比べてどうなのかは分からないが、粉ミルク代よりは安いし、母乳育児による健康のベネフィットに値段はつけられないはずと、頼むことにした。

訪問は電話の2日後。ラクテーションコンサルタントは、2人の子供を持つ30代後半の女性で、家族歴などについて質問をし、息子の体重を量り、授乳の様子を観察し、最後に、息子の口の中を触診した。そして、「私は医療者ではないので、診断をする資格はないのですが」と断った上で、「赤ちゃんの口が大きく開けていません。ごく軽度ですが、舌小帯短縮症だと思います」と言った。

舌小帯短縮症といえば、出産した医師の友人の赤ちゃんも診断を受け、 授乳には問題がなかったにもかかわらず、将来言語発達の問題にならないように、念のため切除している。「最近母乳育児がまたはやりだしたから、 舌小帯の切除も増えているらしいわよ。簡単だったわ」と言っていた。とは言っても、新生児の舌小帯を切除してくれる医師は多くはない。「一日でも早い方が赤ちゃんへの負担が少ないので」とラクテーションコンサルタントに言われ、紹介された耳鼻咽喉科に電話をすると、3日後の予約が取れた。

黒のレザーブーツで現れた女医さんが、麻酔なしで

息子が生後9日目のその日、マンハッタンの、狭いけれどおしゃれな耳鼻咽喉科の診察室に通されてしばらく待つと、黒のレザーブーツのかかとを鳴らして、美しい女医さんが現れた。「ラクテーションコンサルタントに舌小帯短縮症だと言われて」と言うと、息子の口の中を触診し、「そうですね。言語発達などには問題のない、軽度のケースですが、授乳に影響があるのなら切除しましょうか。切除した直後に授乳してもらいますから、準備してくださいね。はい、しっかり抱っこしていてください!」

彼女は手袋をはめたかと思うと、ガーゼで舌をつかんで、上下の舌小帯を、麻酔もなく、あっという間に切ってしまった。息子は「びえええ」と数秒泣いたが、そこでドクターがガーゼで口の中の血を拭き取って「はい、授乳!」と言うので慌てて抱き寄せると、「あ!あんまり痛くない……」。まるで魔法のようだ。

「癒着を防ぐため、7日間だけ、授乳のたびに毎回、清潔な指で切除したところを数秒マッサージしてくださいね」。にっこりほほ笑んで部屋を出て行こうとする医師に「あ、あのー、感染症のリスクなどは?」と聞くと、「生まれたての赤ちゃんの場合、この切除で感染なんてほとんどしないのよ。本当、簡単でしょ!」と、行ってしまった。息子は、とっくに泣きやんでいる。ちなみに、切除は保険でカバーされ、受付で50ドルの「専門医訪問代金」を支払うだけで済んだ。

その後、特に亀裂がひどい右側は、電気母乳ポンプを使用し授乳を数日控え、左側はラクテーションコンサルタントに教わったとおり、縦抱きで授乳すると、傷は癒え、二度と血が出ることはなかった。

ちなみに、舌小帯短縮症でも、授乳に必ず問題が起こるわけでは決してない。電子医学教科書の『UpToDate』によれば、舌小帯短縮症の新生児で授乳に問題が起こるのは、約25%( 舌小帯短縮症がない場合はわずか5%)だという。友人Aは痛みを感じなかったし、母親側と、赤ちゃん側との相性もあるのであろう。もちろん、舌小帯を切除した後でも授乳に苦労をしている女性たちにも出会ったし、あくまで問題の一つでしかないわけだが、私の場合、幸運にもそれで状況は好転していった。

今や、立派な二重あごもでき、パッチリ目のアメリカ人の友人には、「え? 赤ちゃん寝てるの? あ、起きてるの?! ごめん、目が閉じてるように見えた」とひどいことを言われるほど、お相撲さんそっくりの赤ちゃんに育ってしまったが、そこまで母乳で太ってくれたのは、本当にめでたいことである。

緒方さやか(おがた・さやか)
婦人科・成人科ナースプラクティショナー(NP)。2006年米イェール看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。「チーム医療維新」管理人。プライマリケアを担うナースプラクティショナーとして、現在、マンハッタンの外来クリニックで診療にあたる。米ニューヨーク在住。

[日経メディカルオンライン 2013年8月22日付記事を基に再構成]

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