秋の空が「高く」見えるのはどうして?気象予報士 伊藤みゆき

秋に楽しむ特別な雲

よく「うろこ雲」と「ひつじ雲」はどう違うのか?という質問を受けますが、「ひつじ雲」は「高積雲(こうせきうん)」といって、うろこ雲よりも少し低いところ(上空2~7キロ)に浮かぶ雲です。うろこよりもやや大きくて厚みがある雲片です。目安としては、うろこが親指くらいなら、ひつじは握りこぶし大です。また、少し高度が低くなるので、ひつじには氷の粒だけでなく、水粒も含まれています。

綿菓子のように見える雲は「積雲」、夏の入道雲は「積乱雲」。最も空の低いところ(地上~2キロ)に浮かぶのが「層雲」という雲で、地面に届くと「霧」となります。自分の目の高さにあるなら「霧」、自分よりも高い位置に広がれば「雲」というわけです。

秋は「巻雲」「巻積雲」「高積雲」などが現れやすいのですが、これらの雲の特徴はすぐに形や位置が変わることです。きれいな雲をカメラに収めたい…と狙っているうちに消えてしまうこともあります。その分、一期一会の空が私たちの心を楽しませてくれるのでしょう。

こんな形の雲が浮かんでいると、「彩雲」を見られるチャンスかも?!写真は、高積雲の一種
色のついた雲「彩雲(さいうん)」。ピンクや緑、青などの光が現れている状態

秋になると、もし見られたらとてもラッキー、という珍しい雲の登場回数が増えます。

例えば「彩雲(さいうん)」。巻積雲や高積雲が太陽の近くに浮かんだ時、太陽光が細かい雲粒の間を回り込んだりするうちにピンクや緑、青などの色が現れたものです。昔から瑞雲(ずいうん)や慶雲(けいうん)などと呼ばれてきました。15年以上空を観察している私でもなかなか出会えることが少ない雲で、初めて見つけたときは、感動しました。以来、何年も空を見上げている間に「出会えるコツ」のようなものがある気がしてきました。上空の風が強い晴れた空にひつじ雲やレンズ型など端が薄い雲が浮かんでいる時です。台風など激しい風雨から天気が回復するときに見られることも多いような…。太陽に近い雲の端っこですから、長時間探すと目を傷めてしまう恐れもあるのでご用心くださいね。

次に、晴れた日の虹「環天頂アーク」です。これも細かい雲粒と太陽光の兼ね合いで現れます。空のてっぺんに丸く描かれる虹の一部が弧のようにみえている状態です。「逆さ虹」とも呼ばれます。太陽高度などに細かい法則がありますが、太陽が比較的低い位置にある時に、比較的天頂に近い空で見られるようです。天気が下り坂で、ごく薄い雲が空を覆い始める頃が狙い目かもしれません。水平に現れる虹「環水平アーク」とあわせて、「晴れているのに虹が出た!」との問い合わせが多い現象です。

晴れた日の虹「環天頂アーク」。太陽の位置は、写真の左下方向

東京は、昼間はまだまだ暑い日が続いていますが、彼岸に入り西日本では朝晩はかなり涼しくなって、ようやく秋の気配を感じられるようになってきました。強い日差しを避けて伏し目がちに日陰を歩いていた夏が終わり、爽やかな風を感じながら空を見上げられる秋。普段見られない雲を探して歩くのが楽しみな季節がやってきます。

伊藤みゆき
気象予報士。証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動中。

[nikkei WOMAN Online 2012年9月21日掲載]

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