自衛隊がエンタ作品に協力、露出増える背景と「効果」
日経エンタテインメント!
エンタテインメント界で自衛隊の存在感が増している。2013年4月には、イージス艦の描写やセリフ回し、実際にヘリを飛ばすなど制作に全面協力した『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』と『図書館戦争』の2本の映画が立て続けに公開。航空自衛隊の広報室を舞台にしたドラマ『空飛ぶ広報室』(TBS系)も放送された(6月23日終了)。
現代劇はもちろん、第二次世界大戦時の旧日本軍を扱うものなど、これまでも自衛隊がエンタテインメント作品に協力する機会はあった。2009年から3年に渡って放送されたドラマ『坂の上の雲』(NHK)、2011年公開の映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(東映)などが記憶に新しい。
震災を機に関心が高まる
だが、「近年は協力する企画の幅が広がっている」と、陸上・海上・航空各自衛隊の広報室は口をそろえる。バラエティ番組や情報番組が自衛隊員に密着したり、装備を紹介したりと、自衛隊が前面に出る企画も増えてきた。
契機は2011年の東日本大震災だ。被災地での救援活動の様子が報道され、自衛隊への関心が高まった。「それまでは模型誌やミリタリー誌といったニッチなメディアが中心だったが、幅広い層に向けた"一般メディア"の問い合わせが増えた」(陸上自衛隊広報室)。企画書を検討し、政治性や公共性に問題がなく、広報効果があると判断すれば協力依頼を受けるという。
時期を前後して、自衛隊発の情報発信にも取り組み始めた。陸上自衛隊・海上自衛隊は2011年からツイッターやフェイスブックで活動を報告。演習の様子や「音楽まつり」などのイベントをニコニコ動画などで中継する。2013年4月に千葉・幕張メッセで開催されたイベント「ニコニコ超会議2」には、陸・海・空の自衛隊がそろって出展。戦車の展示や自衛官によるトークショーを行った。
航空自衛隊の広報室は「自衛隊の"広報"に対する考え方も変わってきている」と話す。かつては事故などが起きたときの対処が主だったが、今は国民、特に自衛隊に無関心な層に知ってもらうための活動を重視。それは、陸上自衛隊・海上自衛隊も同様だ。「自衛隊は税金で活動しており、国民の理解が欠かせない。自衛官を募集する上でもプラスになる」(海上自衛隊広報室)。
前出の『コナン』は、同作初の4週連続動員1位を記録。国民の関心と自衛隊の変化は、互いの理解を深めると共に、エンタ界にも新たな風を吹き込んでいる。
(ライター 蕪木ふづき)
[日経エンタテインメント!2013年7月号の記事を基に再構成]
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