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タマネギの香りが命 タイのプリン菓子

世界のおやつ探検隊

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NIKKEI STYLE

「今晩、バンコクに発つの。この時期だけど飛行機は満席なのよ」。良い席が予約できなかったとため息をつく友人と食事をした。政情の混乱が続くタイ(タイ王国)だが、2014年2月初めに下院の総選挙が終わったばかりのときで「一区切りついたので、ビジネスなどで行かなければいけない人が集中しているのではないかしら」と言う。

美食の国タイに行くと聞き、つい「おやつ探検隊魂」がうずく。思い出したのが以前、首都バンコクに住んでいた彼女を訪れた際に薦めてもらった「ローティーサイマイ」(サイマイは絹糸の意味)というお菓子。小麦粉で作った薄いクレープ状の生地で綿あめのような糸状のあめを包んで食べる。屋台で売られているもので、シンプルだけれど口当たりが軽くとてもおいしい。タイのお菓子といえば日本のタイ料理店でよく見かける、ココナツミルクにタピオカやフルーツなどを浮かべたデザート程度しか知らなかっただけに感動したものだ。

実は以前、隊員の一人が休暇でタイを訪れるというので、「ローティーサイマイはぜひ食べてきて」と勧めたことがある。ところが、「見つけましたよ!」と言ってその隊員が見せてくれた写真に写っていたものは、自分が食べた白い生地と白い糸あめのお菓子とはまるで違って見えた。

なんと、きれいな緑色の生地にピンク色の糸あめという、色とりどりのマカロンを思わせる色合いだったのだ。

タイのお菓子は素朴で地味という先入観があったので衝撃だった。そんなことも頭に浮かんできて、改めて友人に「タイのお菓子で何が一番好きだった」と聞くと、彼女は「タップティムクロープ(タップティムはザクロの意味)よ」と即答。これは、ザクロの粒大に切ったクワイをあでやかな赤に色付け、外側にタピオカ粉をまぶしてゆでて、ココナツソースと一緒に食べるもの。シャクシャクとした「偽ザクロ」の食感が楽しいデザートだ。

別の東南アジアの国で食べたかき氷やおしるこ風のデザートにこれが何粒か入っていたことがある。彩りがきれいな上に食感がよく「これをもっと食べたい!」と思ったものだが、タイではタップティムクロープ単独でデザートになるのか……。

どうやら、タイには思いもよらない美味なるお菓子の世界が広がっているらしい。

そこで魅惑のタイ菓子の奥義を探るべく、東京・錦糸町のタイ教育・文化センター スアンドゥシットラチャパット大学東京校(以下、タイ教育・文化センター)を訪れた。

同センターは、由緒あるタイの家政大学スアンドゥシットラチャパット大学の日本校で、大学より講師を招きタイ料理教室を開いている。出迎えてくれたのは、来日4年になるという同大講師のダムロンティララット・チョンシター先生。同センターではダー先生と呼ばれて慕われている女性だ。初心者から上級者まで、様々な層に向けた料理コースを開設している同センターでは、これまで約60種ものお菓子を教室で作ってきたという。

「タイ料理は辛かったり味が濃かったりするので、最後に甘いデザートで口直しをするんです。だから、献立を決めるときには、必ずデザートを組み合わせるんですよ」とダー先生は教えてくれた。

目にも美しい、魅惑のタイ菓子

伝統的なタイのお菓子は主にもち米、うるち米、もち米粉、上新粉、ココナツミルク、砂糖で作られている。これらとフルーツやカボチャ、タロイモなどの野菜を合わせて作ることが多く、特にほとんどのお菓子にココナツを使う。カラフルに色付けされているものが多いことも、タイ菓子の特徴の一つだ。宮廷文化の影響から、彩りだけでなく形も華やかなお菓子が目に付く。

例えば、タイの代表的なお菓子に「カノムブアローイ」と呼ばれるものがある。カノムとはお菓子で、ブアは蓮(はす)、ローイは浮くという意味だ。これは、蓮の実と同じぐらいの大きさの白玉をココナツミルクに浮かべたもの。ローイには流す、という意味もあり、「悪いことを流してくれる」ということから、お正月に食べることもあるデザートだ。

「もともと、白玉は白色のみだったのですが、カボチャを混ぜて黄色くするなど、今は野菜などを使って色付けや香り付けをしているものも多いんです」とダー先生。どうやらタイ菓子は時代とともにカラフルになっているよう。ちなみに、王宮では、五色の白玉を入れたカラフルなブアローイを作るそうだ。

さらに、これまで同センターで作ってきたお菓子の画像を見せてもらうと、一際あでやかなものが目に付いた。「ルークチュップ」(チュップはつけるという意味)というお菓子だ。

思わず「かわいい!」と声を上げてしまったルークチュップは、ココナツミルク味の緑豆あめに色を塗り寒天でコーティングをした小さな宮廷菓子。果物や野菜をかたどっていて、ままごと用の食べ物のよう。タイ版練り切りといったところだろうか。練り切りもカラフルだけれど、南国のくっきり鮮やかな色使いは別物。デザートとして食べるのではなく、小腹が空いたときにお茶と一緒につまむようなお菓子だそうだ。

色へのこだわりが反映されるのはお菓子だけではない。

料理教室をのぞかせてもらうと、このときのメニューの一つが菊花茶だった。乾燥させた黄色い菊の花を煮出して砂糖を溶かし入れ、氷を入れて冷やして飲むものだが、お茶の色が鮮やかな黄色であることがタイの人の心をくすぐるらしい。そのため、より鮮やかな黄色に色付けするためのクチナシの花が市販のお茶のパッケージに同こんされていたりするのだという。

タイ菓子は野菜もどんどん使うのか…

一方、「タイ菓子には変わった特徴もあるんですよ」とは、ダー先生の通訳をしてくれた同センターの石川智子さん。タイの大学院で学び、現地の文化への造詣が深い女性だ。

どういうことかと聞いてみると、お菓子を意味する「カノム」という名前が付いているのに、材料に野菜などを使う「料理風」菓子もあるというのだ。パクチーの根やニンニク、豚肉を使った「お菓子」もあるそう。同センターのお菓子写真には、「カノムクロック」というタコ焼き器に似た調理器具で作る、半球形の生地の上にネギやトウモロコシなどをトッピングしたお菓子もあった。生地には砂糖も塩も入っているため甘塩っぱいらしい。甘いお菓子と塩味スナックを合わせたようなおやつだ。

日本のタイ料理店でもよく見かけるタイ菓子の一つに「カノムモーゲーン」というココナツミルク、卵、ヤシ砂糖を使ったタイ風焼きプリンがある。実はこれを作るときも、ホームデーンという紫色の小さなタマネギが欠かせないのだそう。

「プリンの上に揚げたホームデーンをトッピングするのですが、このとき使った揚げ油を生地に混ぜて香りを付けるんです。ホームデーンの香りが全体からするのが、このお菓子のポイントです」とダー先生はいう。

カノムモーゲーンと思われるお菓子は何度か食べたことがあったが、タマネギの風味なんてしたかなぁ。揚げタマネギがトッピングされていなかった記憶から、日本人向けレシピだったのかと推測。

タマネギ風味のタイプリンを探し求めて、いざ池袋

そこで、本格タイ菓子を販売する東京・池袋の「バーンカノムタイ」に向かった。そう、東京にはなんとタイ菓子の専門店があるのだ。

オーナーはソンブン・パンカシコさん。15年前より池袋でタイ料理店「ピラブカウ」を経営する一方で、8年ほど前に同店をオープン。現在約80種のタイ菓子を販売している(販売内容は日によって変わる)。「一番、ラインアップが充実している日ですよ」とソンブンさんに教えてもらい訪れた木曜日の午後のショーケースを見ると、ありました、カノムモーゲーンが。

タイ教育・文化センターで教わったカノムモーゲーンは前述の材料以外にタロイモを使ったものだったが、お店にあったのは緑豆から作った同様のお菓子。上にはしっかり揚げたホーンデーンがトッピングされている。

早速、プラスチックのパッケージを開けてみると、まごうことなきタマネギの香りが立ち上る。なるほど。これが本場のカノムモーゲーンなんですね。味わいは、プリンというよりスイートポテトのよう。そして、口いっぱいに広がるのはタマネギの味と香りだ。食べ終わった後にも口にはしっかりとタマネギの味わいが残り、異国のデザートを食べた実感が。不思議な組み合わせだけれど、クセになりそうです。

タイならではの、もち米とマンゴーのコラボ菓子

ところで、タイ教育・文化センターの石川さんはもう一つ、日本人からすると少し変わったデザートを紹介してくれた。ココナツミルク味の甘いもち米を熟したマンゴーと一緒に食べる「カオニャオマムアン」(カオニャオはもち米、マムアンはマンゴー)だ。

「タイではマンゴーの木が生えている家も多いですし、もち米も家の常備品なので手軽に作れるんですね。マンゴーがおいしい3月か4月によく食べるデザートなんですよ」とダー先生はいう。日本人には「変わった」と見えるお菓子でも、タイという国の日常の風景からごく自然に生まれてきたものなのだ。ちなみに、タイのお菓子によく使われるココナツやバナナも、庭によく生えている果樹なのだという。だから、同地のお菓子によく使われるココナツミルクは生の果実から絞る家庭も多いそう。

ちょうどマンゴーの季節ということで、タイ商務省が本場のタイ料理が味わえると認定した都内のタイ料理店でカオニャオマムアンを食べてみた。これが思った以上においしい。ほんのり甘いココナツソースがかかった軟らかいもち米が、少し酸味のあるマンゴーの果実と合わさって、さわやかな味わい。果実ともち米の食感が異なるのも、おいしさにプラス。ココナツソースは少し塩の味もして、よく塩味がすることもタイ菓子の特徴の一つだと石川さんがいっていたのを思い出す。お店の人によれば、タイには多くの種類のマンゴーがあって、それぞれ味わいが異なるそう。他の種類のマンゴーなら、カオニャオマムアンもまた別の味わいになるのだろう。

実は、家に友人からもらったインスタントのカオニャオマムアンがあった。この機会に食べ比べてみようとパッケージを開けてみた。中に入っていたのは、乾燥もち米、粉末状のココナツソースとフリーズドライのマンゴー。もち米に水を加えレンジで戻した後、これにココナツソースの粉末とマンゴーを混ぜ入れ、しばらく置いてもち米にココナツ味が浸透したら完成だ。

出来上がったインスタント・カオニャオマムアンは、想像していたよりずっとおいしそうだった。食欲をそそるマンゴーの香りもする。しかし、何口か食べてギブアップ。マンゴーはなかなかイケたのだが、炊きたてではないココナツ味のもち米はもて余してしまった。食べるなら、果物がおいしい季節にホンモノを、が基本のようです。

さて、タイ教育・文化センターではダー先生に、お祭りやイベントにつきもののタイ菓子についても聞いてみた。すると先生、「タイには、縁起もののお菓子が9つあるんです」という。

え、9つって決まっているの……。

それには理由があったのです。次回、様々な運を人生に呼び込む縁起菓子をご紹介します。

今回のおやつの生息地
タイ教育・文化センター スアンドゥシットラチャパット大学東京校
住所:東京都墨田区江東橋 1-11-9 ピーケイサイアムビル
電話:03-3634-9993
ホームページ:http://www.thaitec.jp


バーンカノムタイ
住所:東京都豊島区池袋2-62-3
電話:03-3971-1518

[Webナショジオ 2014年3月14日付けの記事を基に再構成]

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