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ネット婚活で、出会った人と付き合ったが…

30代女子リアル婚活物語(4)

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NIKKEI STYLE

 婚活をした女性たちが、婚活を通じて、幸せになったかどうか。何を得て、何を失ったのか――。『婚活難民』の著者にらさわあきこ氏がレポートするこのコラム。前回から引き続き登場するのは、インターネット紹介サービスを使って婚活をする、都内ひとり暮らしの山下聡美(仮名)さん。インターネットの紹介サービスに申し込みをした後、最初の1週間で、およそ100通のメールが届いた。

東大卒の銀行マンなど 4人の男性と会うことに

ネット婚活を始めた山下聡美さんは、メールでやりとりした男性たちのうち、4人と会ってみることにした。

最初に会ったのは、東大卒の銀行勤務の男性だ。

「彼とは土曜の夕方に、池袋で待ち合わせしました。相手の好みがわからなかったので、洋服は普通のOLらしいおとなしい雰囲気にして……。ドキドキしたかといわれると、取り立ててはしませんでした。なぜかといえば、結局はときめいていなかったんでしょうね。だから、向こうの顔を見たときにも、『キャッ』とは思わなかったけど、ガッカリもしませんでした。単に、『写真の人がいるなー』と、淡々と思ったくらいです。

ほかの3人もそうだったんですが、みなさん年が私と同じか、一つ上。だから、自分の男ともだちと見た目はまるで変わらないんです。背も、低くもなく、特に高くもなく、お洒落ではないけど、べつに変でもない。ほんと、普通なんですね。だから、逆にこんなに普通の人たちが婚活をしているなんて、何か理由があるんじゃないかと疑ったくらいです」

彼女が会った4人は、それほどに条件がよかったのだ。とはいえ、彼女はルックスへのこだわりが少ないというので、特にそう感じたのかもしれないが。

彼女がこだわったのは、趣味の分野なのである。

「たとえば、B'zが好きだとかいわれると、私は困るわけですよ。毎日B'zをかけられたら、生活が辛くなりますから。それだったら、音楽は聴かないか、ジャズが好きとかいわれたほうがいい。もちろん、無趣味では困りますから、本は読んでいてほしいです。その点、私が会った人たちは全員、司馬遼太郎や高杉良を読んでいたので、高ポイントでした」

4人のうちの3人は、3回会った後で彼女に「つきあってほしい」と言ってきた。けれど、一番、趣味が合うと思えた阪大卒の男性だけは、何も言ってなかった。

そこで、「彼だけは、もう2回会いました。それでも何もいってこないから、気になって、聞いてみたんです。『これからどうするつもりなの?』って。そしたら彼は、『もっとこんなふうに会ってから、つきあうかどうか決めたい』とふざけたことをいうんです。だけど、これってお見合いなんですよ。5回も会って、わからないなんて悠長なこといってられないじゃないですか。だから、『そんなのイヤだ』といったら、『じゃあ、つきあおう』といわれまして、つきあうことになりました」

「ええーっ、そんなんで大丈夫なの?」と、私はハラハラして聞いた。

「やっぱり心配になりますよね。でも、そのときの私は、5回も彼と会っていたから、もう何もないでは済まされない気分になっていたんです。それに、ほかの人よりは、まだ彼のほうが、趣味が合うとわかっていましたし」

付き合いだしてから彼が告白「実は僕、うつ病なんだ…」

最初から、怪しい雲行きなのである。

「実際につきあってみると、彼は予想以上に暗い人で、『今日はこんな辛いことがあった』とか、『君は、だからダメなんだ』とか、口にするのはネガティブなことばかり。しかもそのうちに、『実は僕、うつ病なんだ』とまでいいだして……」

それでも彼とつきあい続けたのは、どうしても結婚がしたかったから。趣味や感性の合う人ならば、一緒に暮らせると信じたかったのだ。

「当時の日記を読み返したら、こんなことが書いてありました……。『ときめきは一切ないけれど、結婚相手とはこんなふうに、時間を共有しながら愛を育んでいくのだろうか』と」

しかし、そんな聡美さんの気持ちを逆なでするような出来事が起こる。

「ずばりいうと、セックスです。数回会った後で、彼が私とセックスできなくなったんです」

おお、なんという展開でしょうと、私は少し驚いた。

でも、そういえば聞いたことがある。うつ病の薬を飲んでいると、そういう行為ができづらくなると。

「彼は私にいったんです。『結婚もしていないうちから妊娠するわけにはいかないから、そうだ、結婚するまでは、そういう行為はしないでいよう』と。だけど、それって、今になっていうこと? もっと早くからいうべきじゃない? そうでなくても、病気のことだって後からいってきたわけだし……。この人、私にどれくらい秘密があるんだろうと思ったら、どんどん不信感が募ってきて、別れようと決心できました」

会社帰りの彼を居酒屋に呼び出して、聡美さんは別れたいと告げた。

「そしたら、『いいけど、君こそ、その年で僕と別れて大丈夫なの?』と高飛車にいわれました。……ほんと、余計なお世話ですよね」

彼とは半年ほどつきあったので、「半年間を無駄にした」と、聡美さんは激しく後悔した。そして、今後は絶対に失敗をしないよう、プロフィール欄をいっそう厳しくチェックしようと決めたのだ。

そこで、震災の日がやってくる。

聡美さんはこのときに、「英語ができる」「海外に行く」という条件で、相手を探し始めた。するとヒットしたのは、ひとりだけ。

ただちに彼とアポを取り、会うやいなや、つきあい始めた。

「だけど、合わなかったんです」

『踊る大捜査線』の彼である。

「でも、どうしても結婚したかったから、3カ月は我慢しました。けど、3カ月が限界でした」

結局、彼とも別れた。

にらさわあきこ
NHKディレクターを経て文筆業に。500人を取材して書いた『必ず結婚できる45のルール』(マガジンハウス)や、崖っぷち婚活隊と全国の寺社を巡ったコミックエッセイ『婚活の神様!』(幻冬舎コミックス)など恋や結婚に関する著書多数。近著に『婚活難民』(光文社)

[nikkei WOMAN Online 2013年2月26日掲載]

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