婚活紹介サイト「人気者」ゆえの落とし穴
30代女子リアル婚活物語(3)
「学歴や収入にこだわる人」が多い理由
山下聡美さんが入ったインターネット紹介サービスは、入会をした最初の1カ月、お試し期間で無料になっていた。「その1カ月で決めよう」と、彼女は決心をしていた。
「最初の1週間で、およそ100通のメールをもらったんですね。といっても、私がもてたというよりは、私の希望する条件が緩かったためだと思います。だって、私は顔や学歴にこだわりがほとんどないですから。単純に希望に該当する男性が多かったんだと思います」
彼女がこだわるポイントは2つ。
「感性が近いかどうか」と、「休日の過ごし方が同じかどうか」。
しかし、その緩さにこそ、落とし穴があったと彼女は振り返る。
「私の求める条件というのは、会ってみないとわからないものなんですね。だから、できるだけ大勢に会おうと最初は決めていたんです。でも、候補者があまりにも多いと、人って不思議なものですね。条件のいい人から順に、会っていきたくなるんです。私、学歴になんかまったくこだわってなかったのに、気がつけば、東大卒や京大卒の人にばかりメールを返していました」
「なるほどねー」と私は思った。
確かに100人も候補者がいて、1カ月以内で決めたいとなると、何か基準でも設けない限り、選別が難しくなるのだろう。しかも、その基準が彼女のように、「感性」や「休日の過ごし方」となると、あいまい過ぎて絞るのが難しくなるというのもわかる。
(だから、結局は学歴や収入がクローズアップされるのか)
と、私はいたく納得した。
結婚したい女性たちが、それほどにも学歴や収入にこだわっているのではないことを、私は取材を通じて知っている。実際には「思いやりがあること」や「感性が合うこと」をより上位に求める人のほうが多い。けれど、思いやりや感性は、数字で測ることができない。だから、検索システムからはこぼれ落ちてしまうのだ。
そして、こうした検索システムは、学歴や収入にそうこだわっていない女性たちをも、こだわっているように見せかける。だからマッチングがうまくいかないと、「女性が高望みをしているから」となる。
だけど、女性は本当は、高望みなんてしていない。自分に合う"ただひとりの男性"を探しているだけなのだ。
寝不足になるほど婚活に集中、原因は29歳の苦い恋
ひとり暮らしの聡美さんは、仕事を終えて帰るのが、毎日夜の9時くらい。それからごはんとお風呂を済ませて、パジャマ姿でパソコンに向かう。
だから婚活をするのは、夜の11時くらいからになる。
「私は、割と長文を書くので、メールには頭を使うんです。だから、気がつくとすぐに午前3時くらいになっていて、ヤバイ、早く寝なきゃってなる」
寝不足になるほど集中しているのは、早く終わらせてしまいたいから。一刻も早く相手を見つけて、結婚を決めてしまいたいからだ。
「どうしてですか?」と、さらに聞くと、
「ずるずるしたっていいことないと、よく知っているからです」
彼女はそういって、29歳のときに出合った「不毛な恋」について教えてくれた。
「その恋は、私の完全な片思いでなかったと思いたいですが、相手の男性は私との結婚を考えてはくれませんでした」
彼女が好きになった男性は、男友達から紹介された、ちょっと有名な人だった。
会ってすぐ彼女から好きになり、折につけ、自分から誘った。
彼のためならなんでもしてあげたいと、お弁当を作ったり、メールで彼を励ましたりした。その結果、「彼女」になることができた。
「彼は口下手で、メールも一切しない人でしたから、連絡をするのは私から。誘うのもいつも私からでした。だけど、私は彼が大好きだったので、一緒にいられるだけでうれしかったんです。彼は、年収も私よりかなり低かったと思うんですが、それでもいい、私が彼を支えたいって、本気で思っていました」
しかし、彼はつきあって1年たっても、結婚を口にしなかった。
そこで、彼に問いただしてみると、
「『俺は一生、結婚しないし、するとしたら、デキ婚くらいしかありえない』っていわれました。つまり、私とは結婚できないってことです。……それでも、私が頑張って、デキ婚を目指せばよかったのかもしれませんが、うちは実家が厳しいので、デキ婚なんてありえない。この人と先はないんだと思うとだんだん悲しくなってきて、次第に連絡を取るのを控えるようになりました」
すると、彼は追いかけてきてくれず、2人の関係は終わった。
……といっても、そうはきっちりと行かないのが、恋の難しいところだ。
結婚できないとわかってしばらくは、彼と距離を置いていたのだが、その後、どうしても会いたくなって、また連絡をしてしまう。すると、彼は何事もなかったかのように彼女を受け入れてくれるのだ。
しかし、また連絡を取らないでいると、会わない日々が続いてゆく。
あきらめたいけど、あきらめきれなくて、彼女はそれから1年以上も、ずるずると彼に会い続けた。
そして、辛さが極限に達したころ、弟が結婚すると聞かされた。
(次回は5月30日掲載)
NHKディレクターを経て文筆業に。500人を取材して書いた『必ず結婚できる45のルール』(マガジンハウス)や、崖っぷち婚活隊と全国の寺社を巡ったコミックエッセイ『婚活の神様!』(幻冬舎コミックス)など恋や結婚に関する著書多数。近著に『婚活難民』(光文社)
[nikkei WOMAN Online 2013年2月22日掲載]
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