年間約50冊のペース

書棚には、評伝、芸術、文学書など多彩な本が並ぶ。

社長になるまでは週に1冊、年間で約50冊のペースで本を読みました。社長時代はやはり、その6割くらいに減りましたが、また今は元に戻りました。

評伝も、限られた自分の人生を超えて多様な人物の世界を知りたくて、よく読みます。

戸塚洋二さんの『がんと闘った科学者の記録』を読んで、すごい人がいるなと思いました。立花隆さんが戸塚さんのブログの内容の豊かさに驚いて、それを編集したもので、2人の対談も載せています。

がんになったら、普通は恐れおののくものですが、戸塚さんは違います。科学者らしく病状や抗がん剤の効果などを克明にブログに載せている。まさに最後までフルに生きた人です。

週末には油絵を描いていまして、絵をよく見ますが、美術書で挙げたいのは『舟越保武 石と随想』です。74歳で脳梗塞によって右半身不随になり、彫刻家としては絶望的な境涯に突き落とされました。

それでも粘土を力強く貼り重ねたような量感あふれる作品を残し、見る者の心を揺さぶります。一心に彫刻に打ち込んだ舟越さんの生き方に、道元の思想に通じるものを感じます。

(聞き手は特別編集委員 森一夫)

【私の読書遍歴】


《座右の書》
山口範雄味の素会長愛読書
正法眼蔵』(道元著、水野弥穂子校注、岩波文庫・1990年ほか)。人類共通の問題に対する深い思索の結実。ローマ皇帝マルクス・アウレーリウスの『自省録』(神谷美恵子訳、岩波文庫・56年ほか)にも共通点があり、普遍性を実感する。
《その他の愛読書など》
(1)僕らは星のかけら』(マーカス・チャウン著、糸川洋訳、無名舎・2000年)。人間を形作る原子の起源を宇宙の生成に求め、それを解明してきた科学者たちの業績をたどる。
(2)遊牧民から見た世界史』(杉山正明著、日本経済新聞社・97年)。古くからユーラシア大陸を往来し、元のような東西を結ぶ大帝国を興した遊牧民を中心にした世界史。
(3)がんと闘った科学者の記録』(戸塚洋二著、立花隆編、文芸春秋・09年)。死を客観的に見つめる姿勢に感動する。
(4)舟越保武 石と随想』(舟越保武著、求龍堂・05年)。韓国人の彫刻家、権鎮圭の回顧展の図録も素晴らしい。