難病を患って立ち直った最先端の科学者が同じ境地に達しています。

ローマ皇帝のマルクス・アウレーリウスの『自省録』にも、こう書いてあります。「事物は魂に触れることなく外側に静かに立っており、わずらわしいのはただ内心の主観から来るものにすぎない……すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろう……宇宙即変化。人生即主観」

道元と全く同じで驚きました。ことの本質を究めると、空間、時間を超越して共通したものになるのですね。

道元の思想は、あるがままに生きよという意味にも受け取れます。では何もしなくてもよいのか。成り行き任せの運命論なのでしょうか。私は、そうではなくて積極的に解釈しています。

花は自然に散りますが、それを残念がる気持ちを抑える必要はない。思いきり惜しめばいいのです。仕事にしろ楽しみにしろ、今この時を精いっぱい生きなさいと道元は言っているのだと思います。それによって、ものすごく充実した人生を送れるはずです。

宇宙論や物理学にも関心

仏教は宗教を超えて、哲学や科学でもあると理解している。宇宙論や物理学にも関心があった。

僕らは星のかけら』というロマンのある題名の翻訳書は、宇宙についての科学史をわかりやすく書いています。

ビッグバンで宇宙ができた時に、様々な粒子がばらまかれ、それらが集まって原子ができました。例えば「鉄」はいろいろな条件が整わなければ、できなかったそうです。もし鉄がなければ、血液ができず、人類も存在しないわけです。

地球も人も、あり得ないような偶然による産物です。地球環境の保全を、すべてに優先する倫理とするのは当たり前です。

これからの世界を考える時、杉山正明さんの『遊牧民から見た世界史』は多面的な見方の重要性を教えてくれます。

20世紀は、西洋の中でも英米流の価値観が世界を動かしてきました。歴史の見方もそうですが、この本は違う角度から光を当てています。

欧米先進国によって築かれたパラダイムにほころびが出てきました。これから日本の精神性のよい面が見直されてくるでしょう。世界の問題解決のために、日本の勤勉性や共生などの価値観を、役立てられる時代になってきたと思います。

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