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セレブの心の闇に分け入る ミラーとクローネンバーグ カンヌ映画祭リポート2014(7)

2014/5/21

「その人、有名?」なんて口にするのはかつてはミーハーと相場が決まっていた。ところが近ごろは社会的地位のある大人までが「その人、有名だよ」と堂々と口にする。セレブリティ(有名人)を追いかけ、セレブリティであるかどうかを判断基準とし、セレブリティになりたがる。情報化社会の病は深刻だ。

■「フォックスキャッチャー」 元五輪メダリスト射殺事件を映画化

ベネット・ミラー監督「フォックスキャッチャー」

そんなセレブが抱える心の闇に分け入り、セレブを追いかける社会の病理に迫る映画が、19日のコンペに相次いで登場した。

まず米国のベネット・ミラー監督「フォックスキャッチャー」。化学メーカー、デュポンの創業者一族の御曹司であるジョン・E・デュポンが、自身のレスリングチームを指導する元五輪金メダリストのデイブ・シュルツを射殺した事件の映画化だ。実際に起きた事件で、デュポンは統合失調症だった。

デイブ(マーク・ラファロ)と弟のマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は1984年のロサンゼルス五輪のレスリング競技で共に金メダルを獲得した。ところが米国でのレスリングは伝統競技ではあるが人気競技ではない。次のソウル五輪を目指すマークが講演しても聴衆はまばらだ。練習環境にも恵まれないし、生活は苦しい。

そんなとき、マークは億万長者のジョン・E・デュポン(スティーブ・カレル)が設立したレスリングチームに勧誘される。かつてはキツネ狩りに使われた広大な敷地に充実した施設がある。報酬もすごい。まじめなマークはすぐに飛びつく。

マークはデイブにコーチとして来るように誘うが、デイブは断る。妻子と共に暮らす町から動きたくないのだ。巨額の報酬を示したデュポンにはデイブの市民感覚が理解できない。競技会を観戦したデュポンは、デイブが宿泊するホテルの小さな部屋を訪ねるが、はしゃぎまわる子どもたちの相手をしながら「こんにちは」とあいさつするデイブ夫妻の反応に青筋を立てる。「こいつはおれを何だと思っているのか」と言わんばかりだ。

■浮世離れした妄想の世界に生きるセレブリティ

この御曹司、愛国者の家系に強烈な自負をもち、市民の日常感覚を一切もち合わせない。「失礼じゃないか」と兄たちを責めるマークは、すでにデュポンに心理的に支配されている。デュポンは恐怖とコカインで、マークをがんじがらめにしていく。

マークに的確なアドバイスができるのはデイブしかいない。デュポンは高圧的な態度でメダル獲得を命じるばかりで、現実には何もできない。それでいて自分を優れた指導者だと礼賛させ、記録映画まで作らせる。デイブはついに指導にあたることになるが、肝心のマークに精彩がない……。

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