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糖尿病の歴史 切手が語る 中部ろうさい病院名誉院長 堀田饒

2013/8/29

わが国の40歳以上の4人に1人がかかり、4人に1人が予備軍とされる糖尿病。インスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から十分分泌されなかったり、効きが悪くなったりして、血中の糖分が上がったままになってしまう病気だ。悪化すれば人工透析を受けなくてはならなくなる。

中部ろうさい病院名誉院長の堀田饒氏

私は名古屋大学医学部で長らく糖尿病の研究に携わってきた。治療法も進化しているが、大切なのは患者自身が自分の病気に関心を持つこと。医者任せでは、この病気とは闘えない。

どうすれば糖尿病についてみなさんに興味を持ってもらえるか。思いついたのが、私の趣味である切手を使って知識を深めてもらうことだった。

■研究の歴史表す

バンティングとベストによるインスリン発見を記念するカナダの切手

糖尿病に関する切手は世界中でたくさん出ている。啓発用に様々な種類のものが存在しているのだ。特にインスリン発見50周年にあたる1971年から各国で発行が相次いだ。

ここに掲げたのは2000年にカナダで発行されたものである。眼鏡の男性は医師F・G・バンティング、全身が写っているのが助手の医学生C・H・ベストだ。2人が1921年にトロント大学でインスリンを発見した。犬は実験体のマージョリー。バンティングはノーベル賞を受賞したが、これはカナダにとっても大いなる誉れ。だからこんな美しい切手を発行したのだ。

糖尿病に関して記載されたパピルスを図案化したもの。1971年にエジプトで発行された。

現代病のように思われている糖尿病だが、その歴史は古い。最古の記録は、エジプトで発見されたパピルスにある。糖尿病の症状である多尿と、当時考えられた治療法(ニワトコの実や新鮮なミルクなどを混ぜて飲む)が書かれている。そのパピルスの紙面を図案化した切手が71年にエジプトで出ている。

長く糖尿病は腎臓・肝臓・胃の異常が原因だと考えられてきた。膵臓との関係がわかったのは19世紀後半。そして20世紀に入り、世界中で治療法の研究が始まった。

カナダではバンティングとベストに、炭水化物代謝研究の権威J・J・R・マクラウド、化学者J・B・コリップが加わり、研究が進められた。だが発見の名誉を誰が手にするかで内紛が生じ、結局ノーベル賞はバンティングとマクラウドに与えられた。2人はチームの中で対立しており、終生和解はしなかった。

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