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母校の京大で学生向けにイスラム史を講義した際、出口治明氏は「読書は大切だが、特に古典を手に取ることが重要だ」と訴えたという。自分の頭で考えるということが競争力の原点と考え、ちゃんとした本は思考力を鍛えてくれると考えていたからだ。

天才の思考を追体験

出口治明・ライフネット生命保険社長

出口治明・ライフネット生命保険社長

歴史上の天才たち、アリストテレスやカントの思考プロセスを追体験して、アタマの筋肉を鍛えてもらおうということ。古典を直接読み込むのがやっかいだと感じるなら、入り口では岩波書店が出している『書物誕生』シリーズなどで代替することもできると説く。

出口氏が若手サラリーマンにビジネス書として薦めるのは、中国の古典『貞観政要』と『宋名臣言行録』だ。ビジネスの全てのエッセンスが含まれているという。

『貞観政要』は唐の第2代皇帝太宗の言行録。たとえば「(臣下は)天子にへつらい、従順であるだけ。一言もいさめる者がない。(天子に誤りが少しもない)道理があるはずがない」と述べ、臣下に意見具申を求める場面がある。出口氏は、経営会議や取締役会がトップの判断の追認機関になりさがってはならないという戒めに通じ、現代のビジネス書が繰り返し述べてきている点でもあると指摘する。

人間関係の参考に

『貞観政要』が名君の処世訓なのに対し、『宋名臣言行録』は部下からみたマネジメントの書といえる。社長にあたる皇帝はころころ変わるので、名君に仕えるケースばかりでなく、どうしようもない上司と部下の組み合わせもでてくる。出口氏は「すごく人間くさい物語で、人間関係を知る上でめちゃくちゃ参考になります」と語る。

出口社長お気に入りの書籍

出口社長お気に入りの書籍

『宋名臣言行録』のなかに2代皇帝の太宗に宰相として仕えた呂蒙正のこんな話が載っている。執政に登用された際にある役人が陰から「あんな男でも執政なんだから」と聞こえよがしに言った。周囲が収まらず、その役人の官位姓名をただそうとするのを呂は押しとどめ、「名を知れば生涯忘れられぬ。なまじ知らぬ方がいい。問い詰めなかったからといって損はしない」と語った。この話が伝わり、彼の器量がにわかに評判になったという。

出口氏が、歴史を読む上で、必読の2冊と思っている本がある。その1冊、ベネディクト・アンダーソン著『想像の共同体』は現在の国家、国民国家のありようを鮮やかに描き出している。ナショナリズムの特徴もえぐり出した名著だ。

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