アート&レビュー

日経小説大賞

完成度高いミステリー 失踪の謎解き シリアスに 第4回大賞に長野慶太氏「神様と取り引き」

2012/12/25

第4回日経小説大賞(日本経済新聞社・日本経済新聞出版社共催)の最終選考会が行われ、大賞に長野慶太「神様と取り引き」が選ばれた。よく練り上げられたストーリーのほか、構成力や文章力も含めた総合的な作品の完成度が高く評価された。

◇        ◇

長野慶太氏(ながの・けいた) 対米進出コンサルタント。慶応大卒、米ウォーデン大学院修士(MBA)。三井銀行勤務を経て、米法律事務所Woods&Erickson勤務の後、起業。日経小説大賞では第1回に「蒼い砂丘」が、第3回に「逆光のボス」が最終候補に。2011年「女子行員・滝野」で三田文学新人賞。米国在住16年目。47歳。

400字詰め原稿用紙で300枚から400枚程度の長編作品を対象とした第4回日経小説大賞には、200編の応募があった。50~60歳代の応募者が多く、歴史、時代を筆頭に、経済、ミステリー、ファンタジーなど幅広いジャンルの作品が寄せられた。

第1次選考を通過した20編から今回、最終候補作として残ったのは5編。米国の新聞記者が空港内での子供失踪事件の謎を解く長野慶太「神様と取り引き」、戦国時代、徳川家康の身代わりに殺害された人質たちの人間模様をつづった岡島伸吾「青嵐記」、佐伯祐三ら1920年代にパリに渡った画家たちの群像劇、霜康司「ジャポニスム漂泊」、江戸期の浪人侍の生きざまを描いた葉月堅「海江田多聞の決闘」、中国残留孤児の波乱に満ちた人生を物語る村上卓郎「パオモウ(泡沫)」など意欲作が出そろった。

最終選考は7日、辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の3人の選考委員が出席して行われた。まず、各委員が授賞にふさわしい作品を2作以内で推薦。「神様と取り引き」「青嵐記」「海江田多聞の決闘」が挙げられた。その上で5作品について時間をかけて内容を議論し、最終的に全選考委員が「神様と取り引き」への授賞に賛成した。

「リアルでシリアスなミステリー。エンターテインメントの物語として面白い」「構成力とそれを支える知識の幅に才能を感じる」など作品の総合的な完成度を評価する意見が相次いだ。「大衆性のある作家で、次作も面白いものを書けるだろう」との声も上がった。(敬称略)

<あらすじ>
クリスマスイブの夜、新聞社に匿名の電話が入る。「児童がロサンゼルス空港で誘拐された」。母親が児童から離され身体検査を受けた数分の間に蒸発したという。電話を受けた記者が、テロ対策を強化する最新ターミナルで起こった前例のない事件を追い続けるが、児童は発見されず、捜査当局も手詰まりに。ついには「神隠し」と報じるメディアが出てくる。母親は行政の責任を問う行動に出るが……。米国特有の法制度を背景として、日米両国を舞台に、家族の喪失と再生を描くヒューマンミステリー。

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