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アート&レビュー
クローズアップ

2014/7/11

クローズアップ

主役のデザインは私の一存では決められなかったが、敵のメカには自分の好みを反映させた。それが、アパレル業界で学んだ背広のラインのデザインをヒントにした「ザク」だ。メカには強いキャラクター性と魅力的な造形美がないとダメだという私の考えを、「ザク」では最も強く出せた。「本格的なSFロボットものがやりたい」という富野さんたちの思いが「ガンダム」を壮大な人間ドラマへと飛躍させ、敵役の「ザク」をより個性的なキャラへと成長させた。

小型の球形ロボット「ハロ」も思い入れのあるキャラだ。「ダイターン3」の際にボツになり、「ガンダム」で再提案して採用された。

「富野さん、安彦さんとの共同作業はどのように進むのか」とよく聞かれるが、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を戦わせた記憶はなく、遊んだこともない。安彦さんと初めて一緒に酒を飲んだのは、お互いが60歳を過ぎてから。私のデザインはリアリティーを追求するため機械的で武骨だが、安彦さんの手が入ると途端に人間的になる。お互いを尊重しながら仕事をするという、適度の緊張関係があった。

私にとって「ガンダム」は確かに重要な作品となったが、他のメカデザインにも同様に熱意を持って取り組んだ。「装甲騎兵ボトムズ」では、人間と対比しやすい、全長4メートルほどの装甲車、四輪駆動車のような新たなメカができた。一方で「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」などの“ゆるい”メカも楽しい。

企画展契機に人前へ

裏方の私が表に出ることは控えていたのだが、2009年に東京・八王子でメカデザインの企画展を開催してからは、私のデザインを人々に見てもらいたいと思い始めた。昨年の兵庫県立美術館での「超・大河原邦男展」に続き、今後も企画展を開催する。

最初の「ガンダム」の時は31歳だったが、今は66歳。「ガンダム」シリーズは今も続いており、まだまだ仕事はつきない。理想のメカを追求する仕事にゴールはない。

(おおかわら・くにお=メカニックデザイナー)

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