運動能力向上は幼児期から 幼保の取り組み広がる

2013/6/5

暮らしの知恵

子どもの運動能力向上を、幼児期から進めようという試みが広がってきた。小学校入学時にすでに体の動き方がぎこちない子どもが目立ってきたため。国も昨年、初めて幼児向けの運動に関する指針を作成。幼稚園や保育園で、意欲的に取り組むところが出てきている。

近所の小学校の遊具で遊ぶ保育園児たち(横浜市磯子区の森東小学校)

五月晴れの空の下、山梨県南アルプス市立百田保育所の子どもたちが園庭を駆けずり回っていた。特別の行事がない限り、外遊びは毎日午前9時からたっぷり2時間。その間、うんていなどの固定遊具や、開け放した倉庫にある玉やなわとびなどで、好きに遊んでいい。保育士はそこでちょこちょこっと助言をする。

マットや平均台、ロープなどを組み合わせた即席フィールドアスレチック。園児がロープを跳び越えてばかりいると「下をくぐってみたら」と保育士が声を掛けた。玉を投げて遊んでいた子どもには、かついだかごを指さし「ここに入れてごらん」と背伸びして玉を入れる動きを促す。狙いは、遊びの中で多様な動き方を体験させることだ。

仲間と研究会、園児の体力低下知る

所長の保坂和美さん(59)が、園児の運動能力に関心を持ったのは5年前。別の保育所勤務の際、すぐキレたり、転んだりする子が多くなった原因を探ろうと仲間で研究会を立ち上げ、そこで体力低下の現状を知る。

3年前に今の保育所に移って外遊びの時間を大幅に増やし、いろんな動きが出ているかを見て、出ていなかったら保育士が促すようにした。その結果、「転ぶときに手をつけたり、坂道を上手に駆け下りられたりする子が増えた」と実感している。

子どもの体力低下を懸念した文部科学省は、2008年公示の小学校学習指導要領で体育の時間を増やすなど、対策に乗り出した。幼児についても検討を進め、昨年3月、初めて「幼児期運動指針」をまとめた。3歳から6歳までの幼児の望ましい運動のあり方について示したもので、解説用のガイドブックやパンフレットも作り、全国の幼稚園・保育園に配布した。

指針のポイントの一つは、百田保育所が実践しているような「多様な動きが経験できるように様々な遊びを取り入れること」。ガイドブックでは「はねる」「ぶら下がる」など、幼児が体得すべき28の基本の動きを例示している。

鬼ごっこのアレンジも

東京都葛飾区のまどか幼稚園は5年前から、園長の町山太郎さん(30)自らが運動遊びを指導し、様々な動きができるよう種類を増やしている。今春は鬼ごっこのレパートリーとして「団子鬼」を創作。タッチされるとお団子のように丸くなる鬼ごっこで、「走る」だけでなく「しゃがむ」という動きも引き出せる。

すると、自由時間に自主的に楽しむ姿が見られた。いろんな動きができるからといって、子どもが楽しめないのでは長続きしない。町山さんは「一斉活動で教えた遊びを自由時間にするかが運動能力アップのポイント」と話す。

ただ、こうした運動遊びには専門的なノウハウが必要で「いきなり指針を示されても」と戸惑う声も多い。そこで、幼稚園や保育園を専門家が支援する動きも出てきた。

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