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3つ星スイーツ

ケーキはアートじゃない 「星の数」No1パティシエの思い リリエンベルグ・横溝春雄氏インタビュー

2013/5/2

――ほかのパティシエとあなたは何がちがうのか。

「ケーキ屋さんは誰でもプライドを持っている。『俺のケーキが一番』とどの職人も思っている。腕が良く、いい材料を使っている職人は確かに多い。ただ、誰でもできそうで実際はとても難しいのが、作りたてを売り続けることだ。私はシュークリームもショートケーキでも全部、朝に焼いたものをその日のうちに売り切るようにしている。クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子も、製造日から5日以内で売る。作りたてをすぐ提供できることが、リリエンベルグの大きな武器だと思っている」

――遠方からわざわざ来店するファンも多い。新しい店は出さないのか。

「リリエンベルグ」はたくさんの木々や草花に囲まれている(川崎市麻生区)

「事業拡大には興味がない。5月に1週間、8月に2週間以上、お正月も1週間休む。今度の連休明けも、40人前後でスペインに社員旅行に行く。一番大切なのは一緒に働く人々の輪。店舗数を増やしたら、それができなくなってしまう」

「それに、リリエンベルグの生ケーキや焼き菓子は冷凍しない。年中無休の百貨店に出店したら、できたてをすぐ届けるという自分たちの信念を貫き通せなくなる可能性もある」

――やはりスイーツで一番大事なのは味か。

雰囲気のある店内(川崎市麻生区)

「そうは思っていない。菓子はおいしいだけじゃ売れない。おいしいのは最低限。そのために最大限の努力はする。でも、本当の勝負はそこから気持ちをどれだけ入れ込めるかだ。繁盛している店には接客やラッピングなど様々な魅力がある。味は魅力の一つにすぎないと思っている」

「当店は売上高に占める焼き菓子の割合が6割から7割ある。ギフト需要に応えることが繁盛の秘訣といえる。立地は便利と言えないが、口コミで評判が広がり、全国から宅急便でギフトの注文が舞い込むようになった。ギフト商品は贈る人よりいただく人の気持ちになって作っている。例えば焼き菓子の詰め合わせの場合、箱の中に隙間を作らずぎっしり詰める。底上げをしたり、仕切りを作れば菓子の分量が少なくても、箱を立派に見せられるかもしれない。でも、もらって本当にうれしいギフトはそういうものではないだろう。包装のリボンは常時60~70種類を使っている。様々なバリエーションのラッピングを季節ごとに用意している」

――日本のスイーツの今後をどうみているか。

「若手のレベルがずいぶん上がってきた。フランスで開かれる菓子の世界大会『クープ・デュ・モンド』で日本の人材はいつも3位までには入る実力があると確信している。いろいろなコンテストで受賞するために、多くのパティシエが懸命に技術を磨いている。リリエンベルグの若手も店の閉店後に練習をしている」

「世間の人にはパティシエは華やかな職業に見えるかもしれないが、やはり厳しい世界だ。1日の勤務時間は12時間なら短い方。それでいて手取り収入は15万~16万円ということが少なくない。いろいろなシェフから学ぶため修業先を移っていくが、中には社会保険などが十分に整っていない職場もある。私も修業時代を振り返ると、苦しい思いしかなかった。成功するにはその店の弟子のトップになり管理職になるか、独立するか。その2つしか道はない。リリエンベルグは若手を育て、いずれは感謝されるような店にしたいと、いつも思っている」

店舗 川崎市麻生区上麻生4-18-17(電話044-966-7511)午前10時~午後6時(毎週火曜と毎月第1、3月曜定休)

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