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安心・安全

2012/7/4

安心・安全

精米機製造大手のサタケ(広島県東広島市)は10年に策定した仕事と家庭の両立支援計画の中で、家族手当の増額や育児時短勤務の拡大と並ぶ項目として「社内結婚の推奨」を打ち出した。「狙いは一つ。女性総合職の退職を食い止める」。木谷博郁人事部長は力を込める。

祝い品贈呈、社内保育所の割引も

サタケは1998年に女性総合職の採用を始めた。比較可能な99年以降でみると、退職者23人のうち約半数の11人は結婚が理由だった。全社員877人(2月末)の約7割が広島勤務で遠距離恋愛が少なくないため、「交際男性が東京や大阪勤務の場合、女性が退社して転居するケースが多かった」(木谷部長)。社内結婚なら遠距離を理由にした退職は減ると考えた。

平松真次さん(28)と彩さん(27)は昨年4月に結婚した。社内結婚すると祝い品贈呈や出産後に社内保育所の5%割引の特典があるが、真次さんは「社員同士で結婚しても出産しても、辞めなくていいというメッセージを会社が明確に出してくれた安心感が大きい」と話す。彩さんは6月下旬から産休に入ったが、2人で今後の人生設計も立てやすくなったという。

サタケは90年代半ばまで女性一般職を年10~20人ほど採用し、半数近くは社内結婚していたが多くは退職した。平松さんを含めて新制度導入後に結婚したのは3組だが、働き続ける意欲を持った女性社員を逃さない取り組みに知恵を絞る。

「人間関係に支障をきたす」「パワハラにつながる」と社内恋愛を敬遠する人も増え、社内結婚は減少しつつある。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、職場や仕事が出会いのきっかけだった夫婦は29%で、約20年で6ポイント低下。職場の人が仲介することも多かった見合いは10ポイント低下した。結婚までの交際期間は4年超と長くなる一方で、相手選びは「自力で、じっくり」へと変化している。

社内の風通しを良くして社員の能力を活用する。その狙いは社内結婚を推進する企業に共通しているようだ。その副産物として社員も幸せになれば、なおよし。そんな自然体が今どきのようだ。

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佐藤博樹・東京大学大学院情報学環教授の話 20~40代の未婚率は上昇し続けているが、理由の一つに職場の変質がある。彼らの親の世代は、上京して就職した男女の多くが職場で出会って結婚した。職場は大切なコミュニティーであり、運動会や組合青年部活動も盛んだった。男性は役職に就く前に、女性は一定の年齢に達する前に結婚したほうがよいという社会のムードがあり、上司や先輩が結婚を後押しする例も多かった。

今の職場は仕事だけのドライな関係に変化し、恋愛など個人の問題に踏み込むのはセクハラ行為とされる恐れもある。結婚後も働く女性が増え、1980年代までのような女性の結婚退職と新規採用の繰り返しによる職場でのマッチング機会も減少した。若者は異性と出会う機会をつくる努力が必要になった。

結婚へ背中を押されない時代は、自らのコミュニケーション力や決断力が問われる。それは企業人としても大切な素養で、スキル向上の意義は大きい。

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