出世ナビ

職場の知恵

誰とも話さず一日終わる…職場に広がる「無縁社員」

2012/9/3

オフィスでふと孤独にさいなまれる瞬間がないだろうか。不況を背景に職場は緊張感が高まり、個々の成果が厳しく求められる。連帯感は薄れ、ドライな人間関係が生まれている。机を並べていても同僚とのつながりをいまひとつ実感できない。そんな無縁社員が広がっている。

オフィス片隅の「結スペース」で雑談を交わす(東京都大田区のディスコ本社)

「お疲れさまです」。夕闇迫る勤務先の通用口。退社時に警備員から声を掛けられて、会社員のAさん(46)は、これがその日会社で初めて人と交わした会話だと気づいた。マーケティング部門に勤務し、営業戦略を練っている。要所要所で会議や打ち合わせはあるが、日常はデータを調べたり資料をまとめたりの個人プレー。「誰とも話さずに一日が終わることもある」

■社員の3割弱「職場で孤独を感じる」

以前は同僚と昼食や飲み会に行っていたが、その機会も減った。特に数年前のフレックスタイム制の導入による影響が大きかった。出社や退社、昼休みも人それぞれ。残業削減も同時に推奨されたので仕事の密度は濃くなり、だれもが忙しそうだ。「実際には全員が年がら年中余裕なく働いているわけではないが、声をかけづらい。関係が疎遠になる一方だ」と嘆く。

産業能率大学は2011年に会社員らから職場のコミュニケーションの実態を調べた(有効回答337人)。「職場で孤独を感じるか」という質問に3割弱が「よくある」「ときどきある」と答えた。同大学総合研究所の中村浩史研究員は「経営は厳しく、仕事は増えても人員は増えず、周囲に構う余裕がない。会話はあっても業務上の報告や連絡が主体。相談や雑談といった自発的なコミュニケーションが減り、個々は孤立感を高めている」と分析する。

IT(情報技術)機器が普及し、対面コミュニケーションの機会は減少。仕事と私生活の線引きをはっきりさせ、必要以上のコミュニケーションを望まない社員も増えた。例え孤独を感じる人がいたとしても、与えられた仕事を一人ひとりが黙々とこなし、それで生産性が上がるなら職場の変化も仕方ない。だが現実はどうやら違うようだ。

日立製作所は、もしもしホットラインと共同で職場のコミュニケーションと生産性の関係を昨年から今年にかけて検証した。電話セールスを担当するもしもしホットラインの社員144人に小型センサーを携帯してもらい、就業時間内の行動を約1カ月、逐一記録した。職場の誰といつ、どの程度接触・会話したか。そのデータを基に営業成績を上げる対策を探った。

■仕事外の会話や雑談が営業成績をアップ

上司の指導か。個人の営業スキルの高さか。いくつかの仮説を検証し、意外な結果が出た。休憩時間に同僚との会話が活発であるほど職場全体の受注率が高まったのだ。日立の中央研究所主管研究長、矢野和男さんは「集団で働くには連帯感や一体感が大切。仕事に関係ない会話や雑談が一人ひとりのモチベーションや仕事と向き合う積極性を高め、それが営業成績を押し上げる」と分析する。

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL