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職場の知恵

「パワハラ」のレッテル怖い 怒れない上司の憂鬱

2012/7/2

かつては職場に厳しさで恐れられる管理職がいたものだ。理不尽な命令や嫌がらせは論外だが、仕事の厳しい指導は若手の成長を促す面もある。だが最近は「厳しさ=パワーハラスメント」ととらえる風潮が広まる。指導なのかパワハラなのか。判断に迷い、しかりにくい状況が生まれている。
オリックスは独自に基準をつくり、パンフレットなどで意識改革に取り組む

■ある日突然、レッテルが

「おまえ、パワハラしたらしいな」。同期の言葉に40代のAさんは耳を疑った。身に覚えがない。営業部門で課長を務める。うわさの出どころが部下の若手と分かり、ようやく状況がつかめた。

1カ月ほど前、その部下が「夏休みを6月末に1週間ほど取りたい」と言ってきた。例年6月は多忙期。「少し後ろにずらせないか」。「もう予定を立てたので」。やりとりを続けるうちに「職場の状況も考えろ」とつい語気を強めた。この一件がきっかけとなり、業績アップのため休みも取らせないパワハラ上司のレッテルを張られたらしい。

課長に昇格したときに部下に嫌われるのを恐れるなと先輩に助言された。その心得は忘れていないが、パワハラと言われ腰が引けた。「感情的になったのは認めるが怒鳴ったわけでもない。部下の指導がやりにくい」と戸惑う。

パワーハラスメントという言葉が周知され、暴力や罵声を浴びせる悪質な行為は職場で問題視されるようになった。半面、訴える側の過剰反応も出てきた。

「企画提案をいつも言下に否定される」「失敗を同僚の前で指摘された」。企業の相談窓口にパワハラと社員が訴えた実例だ。いずれもその内容だけでは認定しづらい。

■定義は曖昧

人事研修会社クオレ・シー・キューブ(東京都新宿区)は2010年に職場のパワハラの実態を調査した(有効回答163社)。すると53.4%の企業が「訴えがあったが、パワハラと判断できないケースがあった」と回答した。同社の岡田康子社長は「業務上必要ならば厳しくしかっても構わない。でもパワハラだと訴えられるのが怖くて部下への指導をためらう管理職が出てきた」と指摘する。

混乱の一因はパワハラの定義が明確でないこと。訴訟で個別に認定されたケースはあるが、どんな行為がパワハラかを明示する法律はない。厚生労働省の研究会が目安となる類型(別表参照)を今年まとめたが、あいまいさは残る。

大成建設は4月、就業規則にパワハラ禁止を盛り込んだ。ただ、そこで明記したのは暴力や人格を否定する発言など明らかな違反な行為だ。人材いきいき推進室長の塩入徹弥さんは「現場では安全のため、とっさに怒鳴ることもある。それもパワハラなのか」と話す。

社員育成のためにしっかりした指導も欠かせない。「同じ行為でも上司と部下の関係の良しあしで、許されるときと許されないときがある。個別に判断せざるを得ない」と打ち明ける。

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