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激化するアジアのアート競争 日本がとるべき戦略は

2014/5/30

塩見有子(しおみ・ゆうこ) 特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT)理事長。学習院大学法学部政治学科卒業後、英サザビーズインスティテュートオブアーツにて現代美術ディプロマコース修了。2002年、AITを立ち上げ代表に就任。現代アートの学校「MAD」やアーティストインレジデンスの運営企画、MONEX証券株式会社「Art in the オフィス」など企業との連携を進める。
綿江彰禅(わたえ・あきよし) 野村総合研究所 公共経営コンサルティング部 主任コンサルタント。1981年生まれ。文化政策、博物館政策、クリエイティブ産業政策、創造都市政策をテーマにコンサルティングを多数手がける。 過去の担当事業は文化庁「諸外国の現代美術に関する状況等に係る調査事業」、「国立文化施設におけるパブリックリレーションズ機能の向上に関する調査」、「諸外国の文化政策に関する調査研究」など。

綿江 美術品の総売上高約6.7兆円という数字は、約1.5兆円といわれる音楽市場に比べても大きな規模です。売り上げはオークションとギャラリーの割合が半々で、オークションの約13%を占めるのが現代アート。そのうち中国が33.7%、米国が33.72%を占め、現時点で若干、米国が勝ってはいますが、逆転は時間の問題でしょう。

ただ、英アートレビュー誌による美術業界実力者のランキング「2013 Power100」に選ばれた中国人作家は2人だけ。欧米の美術業界と市場とでは評価する作家や作品が異なるのが実情です。

■美術品を資産とみなす中国

塩見 昨年開かれたオークションでは、美術品の落札価格として史上最高値の約141億円でフランシス・ベーコンの絵画「ルシアン・フロイドの3習作」が落札され話題になりました。その入札者にはアジア人も含まれていたといわれます。アジアに有力な買い手が増えていますね。

小山 そうですね。例えば、マレーシアでは8人ほどの有力コレクターが自国の現代美術を買い、地元作家を支援しています。また、インドネシア、シンガポールなどは国際的に知名度の高い作家を幅広く好み、投資目的だけではなくコレクションを趣味にする愛好家も増えています。

金島隆弘(かねしま・たかひろ) アートフェア東京2014エグゼクティブ・ディレクター。1977年東京都生まれ。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、05年より東京画廊+BTAPの北京スペースの運営、「ART iT」東アジア地区プロデューサーを経て現職。FEC(ファーイースト・コンテンポラリーズ)代表。東アジアにおける現代アートのリサーチプロジェクト、作家の作品制作支援、交流事業等を手がける。
小山登美夫(こやま・とみお) ギャラリスト。1963年東京生まれ。87年、東京芸術大学芸術学科卒業。96年、小山登美夫ギャラリーを開廊。奈良美智、村上隆をはじめとする同世代の美術作家の展覧会を多数開催。現在も国内外の有力作家を紹介する。12年、シンガポールに支店をオープン。著書に「現代アートビジネス」(アスキー新書)、「その絵、いくら?」(講談社)、「見た、訊いた、買った古美術」(新潮社)。

金島 中国や台湾では、美術品購入を資産運用におけるリスク分散の手段として考える人が多い印象です。自国の貨幣よりは名画を持っていた方がいい、という考えが根底にはある。同時に、彼らは投資目的だけで取引すると作品の価値が下がることも理解しているので、国際美術展を開いたり美術館を造ったりするなどしてグローバルな視点から自国の美術を価値づけしています。非常に戦略的ですね。

綿江 対して日本の美術市場がこれほど小規模なのは、美術品が資産として見なされていないからといえます。日本の美術品購入者を対象に購入理由を調査したところ、1位は「自分のため」、2位は「飾るため」。「資産として」は6%程度で10位以下という結果でした。

小山 バブル崩壊以前は日本にも資産という発想はあり美術市場も安定していました。今は美術館が多くできた一方、日本人は(美術に関する)お金の話を嫌う傾向もあって、バブル以前よりもその資産価値が低くとらえられているのは確かですね。



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