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奥むめお 「働く女性」の基盤築く

ヒロインは強し(木内昇)

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NIKKEI STYLE

職業婦人が増えたのは、関東大震災後である。丸の内では勤め人の一割を女性が占め、職種もタイピスト、事務員、教員と多彩になった。が、仕事は補佐的で、給与も男性の半分程度、しかも世間的にはまだ賤(せん)業視されていた。

女は家を守るものという不文律は明治大正でも健在で、働きに出ることは「女工哀史」に代表されるように貧しさの象徴だった。しかしその一方で、女性の権利を唱える動きも出ている。震災より少し前、平塚らいてう、市川房枝を中心に、婦人の地位向上を目指す新婦人協会が発足した。なにしろ当時の治安警察法では、婦人が政治的演説を傍聴することが禁じられていたほど。実質的に社会と隔たった存在だったのだ。

主婦として暮らしていた奥むめおを、らいてうが訪ねたのはこの頃である。婦人運動への誘いだった。大学卒業後、雑誌「労働世界」の記者として働いたむめおだったが、妊娠中ということもありはじめは躊躇する。が、「もしこの時において、婦人が立たなければ未来の社会もまた婦人を除外した男子中心のものとなるに相違ありません」という新婦人協会宣言に共感し、出産ののち赤子を背負って、活動に参加するようになる。

治安警察法改正に奔走し、活動を広めるため機関誌「女性同盟」も発行。貴族院本会議で「女子の本分は家庭にあり、女子が政治上の運動をして悪い結果をもたらすのは歴史において証明済み」とトンデモ意見が議員から飛び出しても諦めず、二年がかりでようやく法改正に漕ぎ着ける。ところが肝心の女性たちは演説を聞きに来るわけでもなく、政治にも依然無関心。この現実を目の当たりにしてむめおは愕然とする。

今のままの状態で婦人参政権運動に移っても、一般女性の意識が変わらねば画餅に終わる――そう悟ったむめおは他の婦人運動家とは異なる道を辿る。職業婦人社を結成して女性の仕事の場を広げると同時に、消費生活を通して社会のからくりを学べるよう婦人消費組合協会を作った。これによって児童福祉、税制改革が女にも身近な話題となるわけである。

家庭と仕事を切り離さず、両立できる環境を目指す。現代から見ても先鋭的な考えを彼女は具現化していた。「わたしが思う政治運動とは、平々凡々な女の日常生活のなかに政治を見出し、その道を光あり、幸ある明るいものにすることです」。戦後は自ら議員となり、「生活の合理化なくして女の解放はない」と九十歳過ぎまで現役で婦人問題を扱い続けた。

働く女性が一般的になったのは、先達の苦心があったからこそ。けれど未だ環境は万全とは言えない。託児所不足などの問題がある反面、若年層には専業主婦願望も増えている。選択肢が増え、女の在り方はひとつの物差しで計れなくなった。既婚未婚、仕事を持つ、家庭に入る。対男ではなく、今度は女同士が互いの選択を尊重し合うことで、真の「解放」への足場が固まるのかもしれない。

[日本経済新聞朝刊女性面2014年3月1日付]

木内 昇(きうち・のぼり) 67年東京生まれ。作家。著書に「茗荷谷の猫」「漂砂のうたう」(直木賞)「笑い三年、泣き三月。」「ある男」など。

※「ヒロインは強し」では、直木賞作家の木内昇氏が歴史上の女性にフォーカス。男社会で奮闘した女性たちの葛藤を軽妙に描きます。

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