“味の職人”が明かす「勝利の方程式」

「自分たちの食文化を押しつけず、相手の食文化に自らを合わせていくのが基本戦略」。小野さんはこう強調する。

そのため、各海外法人には専門の開発部隊を置き、日本人と現地人による混成チームを編成している。こうした“味の職人”たちが現地の食文化や消費動向を丹念に調査しながら、新たな食文化を生み出しているわけだ。

実は、ヒット商品の味を開発するための「勝利の方程式」がある。

大切なのは、味付けのモデルとなる地元の料理店を1つ選定すること。「これなら地域の消費者に受け入れられる」という具体的なメニューを、実在する店の中から実際に選んで決定するのだ。そして、開発スタッフが何度も店に通い、その料理を参考にしながら商品の味を作り上げていく。

「試食を繰り返し、消費者の声も聞きながら改良を重ねるんです。商品を発売した後も見直しを続け、より客に好まれる味に仕上げていく」と小野さん。こうして味覚は進化を繰り返していく。「味覚の探求」は小野さんにとって、終わりのないライフワークなのだという。

日本と海外でなぜ違う? 商品のロゴ

最後に雑学をいくつか紹介しよう。

前回、「カップヌードル」の名称が日本(単数形=カップヌードル)と海外(複数形=カップヌードルズ)では異なることを取り上げたが、それ以外にも面白いウンチクがある。

写真は日本版と米国版のロゴ。双方でデザインが微妙に違っていることにお気付きだろうか? 

注目してほしいのが「O」の形状。実は、日本版のロゴだと、「CUP NEEDLE(カップニードル)」と誤読されやすいことが

「Needle」(ニードル)と誤読されないように海外版のロゴを変更。日本版のカタカナは「ド」が小さい。(上が日本版、下が米国版)

以前から指摘されていた。アルファベットの「O」と「D」の文字がかなり重なっているうえ、「O」のハネも大きいので、「e」と間違われやすいのだ(「NEEDLE」だと「針」という意味になってしまう)。

そこで、特に外国人の誤読を防ぐため、海外版はロゴの文字の重なりをやや離し、ハネを少し抑え気味にして、「O」を「e」と間違わないように手直ししたという。2003年のことだ。さらに全体のデザインにも手を加えたので、海外版の方が日本版に比べると立体感が少し薄れた印象のロゴになったそうだ。

もう一つは日本版のカタカナの表記。「カップヌードル」の「ド」が、なぜか小さめに印刷されていることにお気付きだろうか?

日清食品によると、これは「ヌードゥル(NOODLE)」という正確な発音に近づけるための工夫だという。たしかに「ド」を小さく書いた方が、英語の発音がより正確に表現できているような気がする(ただ一部では、「ヌード」という単語が目立たないように配慮したのではないかという俗説もあるようだ)