世界中の女性が着せ替え遊びに熱中してきたバービー人形。1959年の誕生から50年余りの長い歴史を振り返ってみると、意外な秘話が数多く隠されていることに気付く。顔や体の動きなどの変遷を追い掛ければ、時代の世相も透けて見えてくる。今回はバービー人形にまつわるウンチクを紹介しよう。
1万体以上所有する世界的な収集家が浅草にいた!
取材に訪れたのは東京・浅草。雷門のはす向かいに本社を構える伸銅品問屋、関口冨美雄商店の関口泰宏社長は世界でも有名なバービー人形の収集家として知られる。もともとは古いブリキの玩具などを集めるのが趣味だったそうだが、80年代初めのある日、東京・高円寺にある“懐かしグッズ”の専門店「ゴジラや」の顔なじみの店主から購入を勧められたのがバービー人形だった。
59年の皇太子(現天皇)と美智子さまのご成婚を記念して作られたとされる非売品。バービーは純白の着物に身を包み、ケンは和風の柄のタキシードに日本刀という珍しいいでたち。「値段は20万円でかなりの出費だったが、思い切って買ってみることにした」と振り返る。
後に、それが大変価値のある「レアもの」だったことを知り、バービー人形の世界に足を踏み入れるきっかけとなった。「昔からファッションには興味があったんですよ。人形を観察すると、服の細かな作り込みなどが素晴らしいことが分かるのでその魅力に引き込まれた。米国で開催される収集家のコンベンションに買い付けに出掛けたこともある」。今でも年に50体くらいは買い続けているそうだ。
現在では1万体以上を所有し、展示イベントなどにも積極的に出品(今回掲載した写真はすべて関口さんの収集品)。特に好きなのは日本で製造されていた59年から70年代初めまでの製品だとか。「丁寧な作り込みで生産に携わった人や職人たちの意気込みが伝わってくるような気がする」と柔らかな視線を人形に注ぐ。
実はバービーは日本生まれ
バービーが誕生したのは59年のことだ。
米マテル社の共同創業者のハンドラー夫妻が欧州に家族旅行した際、見つけたマスコット人形「ビルド・リリ」をヒントに着せ替え人形の開発を思い立った。早速、日本の玩具問屋、国際貿易に開発・生産を依頼。衣装デザイナーのシャーロット・ジョンソン女史を日本に派遣し、滞在先の帝国ホテルにミシンを持ち込み、1年以上も試作を繰り返しながら完成させたという。
実はバービー人形は日本生まれだったのだ。
ところで、バービー人形の歴史をたどると、時代によって顔つきが大きく変化しているのがわかる。