老朽化で解体・建て替えへ
まず「中野サンプラザ」(21階建て、土地面積9530平方メートル)について。
読者の中には人気歌手のコンサート会場として訪れた思い出がある方も多いのではないだろうか?
開業は1973年。もともとは旧労働省所管の特殊法人、雇用促進事業団により整備された公共施設だったが、2004年に中野区や金融機関、民間企業などが出資する「まちづくり中野21」に売却。ホール、ホテル、レストラン、宴会場、会議場、ボウリング場などを備えた複合施設として営業を続けている。
かつては「渋谷公会堂」「東京厚生年金会館」「日比谷野外音楽堂」などと並んで人気の高い“音楽の殿堂”として知られ、吉田拓郎、かぐや姫、オフ・コース、荒井由実、キャロル、イルカ、五輪真弓など日本の歴代の人気芸能人や海外の大物アーティストらがコンサートを開催してきた。
最近では「AKB48」やつんく♂が総合プロデュースを手がける「ハロー!プロジェクト」(ハロプロ)などのアイドル歌手のコンサート会場としてもよく使われており、「アイドルの聖地」としても知名度が急速に高まっている。
このように多くの人にとって愛着の深い建物だったが、中野区都市政策推進室では「すでに老朽化が激しいので安全面から考えても建て替えないといけない状況」だという。ただ、建物の中身や形状など最終的な姿については検討中。「歴史的な経緯を十分に踏まえ、単なる商業ビルではなく、中野らしい特徴があり、多くの人から愛される文化施設になるようにしたい」と話している。
2020~24年ごろをメドに再整備する目標だ。
中央線のミステリー 中野に駅ビルがなかったワケ?
一方の駅ビルについて。
JR中央線には1つのミステリーがあった。どういうわけか中野に駅ビルがなかったのだ。
表はJR東日本がまとめた2012年度の所管駅の1日平均乗車人員のランキング(上位25位)である。中央線の駅を着色すると、中野は新宿、東京、立川、吉祥寺に続いて中央線では5番目に交通量が多い。ランキング全体でも25位に食い込んでいる交通の拠点だ。にもかかわらず、これまで中野には駅ビルがなかった。
JR東日本は「ルミネ」「アトレ」などの駅ビルを展開しているが、中央線の各駅を見ると「ルミネ」が新宿、荻窪、立川など、「アトレ」(「アトレヴィ」を含む)が四谷、吉祥寺、信濃町、東中野などで営業しており、中野には駅ビルがない。
このミステリーについて関係者は(1)「売り上げが減少する」と地元商店街からの抵抗が強かった(2)百貨店や専門店などが集まる日本一の消費地、新宿に近すぎて商業ビルとして成り立ちにくかった(3)中野通りを掘り下げて駅をつくったので地形上、工事の難しさがあった――ことなどを要因に挙げている。
地元商店街ではすでに反対運動の旗を降ろし、活性化の材料としてむしろ歓迎する姿勢を見せている。駅ビルの詳細について、JR東日本は「現在検討中」(広報)とコメントするだけだが、行政関係者や地元経済界は「駅ビルの高さは30メートルほどで、2フロアほどを駅関連施設として使い、残りを商業スペースにあてるだろう」と推測している。
「アトレ大井町」がモデル?
「大井町駅のアトレが参考になりそうだ」――。
線路の上空を活用した駅ビルである大井町がモデルケースになるとも想定しており、6月20日、中野南口駅前商店街の吉田稔夫会長らが現地を視察した。
中野駅ビルは地元からの働きかけで整備する「請願駅」の形態をとる予定。つまり、改札や駅舎、南北通路などの整備費用は中野区が負担し、駅ビル自体はJR東日本が建設する計画だという。中野区は駅ビル関連の初めての予算として今年度に1億数千万円を計上した。東京五輪が開催される2020年までの完成を目指している。