シェアハウスが開く新しい地域の姿

一つの住宅に複数の他人が一緒に暮らすシェアハウス。ここ数年、若者を中心に利用が広がっているが、福祉や地域活性化にも役立てようという動きが目立ってきた。様々な立場の人たちが支え合って暮らす住まいは定着するのだろうか。

ブリッジフォースマイルが運営するシェアハウスの食堂の様子(東京・渋谷)

「安い家賃も都心に近い場所も魅力的」。専門学校生の山本直子さん(仮名、18)は今春、東京都渋谷区にあるシェアハウスに引っ越した理由をこう語る。

直子さんは、虐待を受けた子どもや身寄りのない子どものための児童養護施設で暮らしていた。施設は原則18歳で出なければならない。そのとき、ここを紹介された。今は社会人女性2人と暮らす。

若者の自立支援、高齢者も対象に

「困ったことがあったら先輩たちに教えてもらう。住み心地はいい」と直子さん。シェアハウスを探していた同居の社会人、海部知子さん(仮名、33)も今春入居。「だれかを支援しているという感じもなく、いろいろな人と出会えて世界が広がった」と話す。

このハウスを運営しているのは、児童養護施設を退所した人たちの自立を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)ブリッジフォースマイル(東京都千代田区)。施設の子どもの中には自立前に十分な準備ができず、退所後、社会に適応できなくなってしまう場合や経済的に苦しい例も多い。

そこで(1)他人と暮らすことで幅広い経験ができる(2)家賃を安くできる(3)孤立を防げる――といったシェアハウスの利点に注目した。法人が大家から住宅を借り上げ、それを入居者にまた貸しする方式などで2010年からこれまでに3つのハウスを手掛けた。渋谷区の物件の場合、施設退所者には月3万5千円、社会人には約5万円の家賃で提供。定員6人で入居者を募集中だ。

法人理事長の林恵子さんは「ハウスの運営にはまだ課題があり、試行錯誤の段階」と話す一方、「今後の可能性も感じる」という。

シェアハウスは台所やトイレなどを共用し、各部屋が入居者の個人スペースとなる形式が一般的。シェアハウス事情に詳しい千葉大助教の丁志映さんによると、03年ごろから都市部で若い女性を中心に本格的に広がり始め、05年には約53万人、10年で約73万人が暮らすと推測される。

当初は家賃の安さが注目されたが、最近では都心という「好立地」や共同生活の「楽しみ」で選ぶ人も増え、多様化が進む。そんな中で社会的に弱い立場の人を含め、様々な人たちで共に暮らす動きも出てきたわけだ。

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