2013/5/26

山縣 ヨーロッパの貴族社会から生まれたのが一点物のオートクチュール。60年代にはそれらを生産ラインに乗せ、高級既製服(プレタポルテ)が作られるようになりました。オートクチュールの舞台はパリで、今もそこに業界の軸がある。しかし、今、システム的に問題を抱えています。つまり、ブランドが半年から1年かけてファッションショーで発表し、その半年後に納品していたのが、ショーに出た途端にネットで世界中に流れ、早くて1週間ほどでコピーされたデザインが出回ってしまう。それがすべてではありませんが、不健全な状況ですね。

ゼネラル・モーターズの自動車デザイナーによる未来の車のイメージ図。タイムマシンのようにも見える。
ゼネラル・モーターズの自動車デザイナーが描いた未来のカーレース。レーシングカーだけでなく、空を飛ぶ車や空間デザインにも遊び心が表れている。

小澤 自動車業界はいかがでしょうか。

ゼネラル・モーターズが1950年代に発表したコンセプトカー「ファイアーバード」(左から、ファイアーバード1、2、3)。SF世界から飛び出したような、自動操縦で走る車。

ハンセン 車の開発も加速しています。昔は5、6年だったのが今は3年で完成させている。技術の発展もありますが、市場の動きも速いのです。デザインが良く技術も高いものが価値を認められず、ファストファッションのように、単に安ければいい、というのが世の流れになってしまうと心配ですね。

小澤 グローバル化が進み、車のデザインにも変化はありますか。

ハンセン 昔はキャデラックと言えばアメリカそのものを表現していました。今は、アメリカデザインの良さを保ちつつ、どんな国でもかっこよく、乗る人のセンスに合うデザインを追求しています。そのために、私たちは世界中にデザインセンターを作り、意見交換をしています。価値となるのはやはり、デザインなのです。

遊び心で未来を作る

ジョージ・ハンセン氏

小澤 個性的なデザインを生む創造力は、どのように磨かれるものなのでしょう。

山縣良和氏

ハンセン 常に新しい挑戦が必要とされるビジネスにおいて、創造力はとても重要です。それはデザインだけでなく、技術やビジネスモデルにおいても同じ。我々の企業では昔から、デザイナーたちに自由な遊びの場を提供してきました。ロケットのような自動操縦のコンセプトカーを作ったり、未来のカーレースを想像したり。そこから意外なヒントが生まれることがあるのです。斬新な発想を生み出すための余地を、会社は作らなければいけないと思います。

山縣 未来を知りたければ未来を作ればいい、という言葉があるように、創造性は次の未来を作るもの。僕自身は趣味を持たず、遊びもすべて、もの作りで発散しています。そして、積極的に異業種と交流し、多様な価値観を学ぶための教育の場も作っています。働き方についても、発想を変えれば、遊ぶことでいつの間にか社会貢献していた、ということが実現できるのではないでしょうか。

[4月25日の電子版セミナー「アートで遊ぼう! 第3回 会社も遊ぼう!」の内容を再構成]

ジョージ・ハンセン
ゼネラル・モーターズ・ジャパン コミュニケーションズ/R&Dサイエンスオフィス ディレクター。ゼネラル・モーターズ・ジャパン株式会社のコミュニケーションズと先端技術のディレクターを兼務。ドイツ人の父と日本人の母を両親にもち、東京に生まれる。独マインツ大学商学部卒業。1996年、ゼネラル・モーターズ入社。広報業務に携わる前は、スズキ自動車との小型車の開発をはじめ、燃料電池事業本部アジア太平洋地域担当ディレクターとして、上海汽車集団やスズキ自動車との燃料電池自動車の共同開発に携わる。

山縣良和(やまがた・よしかず)
リトゥンアフターワーズ代表。
2005年、セントラルセントマーチンズ美術学校卒業。ジョン・ガリアーノのデザインアシスタントを務めた後、帰国。インターナショナルコンペティションITS#three Italyにて3部門受賞。2007年、リトゥンアフターワーズ設立。08年9月より東京コレクション参加。09年、オランダアーネムモードビエンナーレにてオープニングファッションショーを担当。11年、オーストリアにてファッションショーを開く。12年、日本ファッションエディターズクラブ新人賞受賞。ファッション表現の実験、学びの場「ここのがっこう」主宰。

小澤慶介(おざわ・けいすけ)
現代美術キュレーター
1971年生まれ。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ現代美術理論修士課程修了。NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]が運営する現代アートの学校MAD(Making Art Different)のプログラム・ディレクター。ビデオアートの展覧会のほか、守章「終日中継局」展(2012年)、泉太郎「たしかめる」展(13年)などの実験的な展覧会企画を手掛ける。

(構成 生活情報部 柳下朋子)

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