2013/5/26
リトゥンアフターワーズ「After the Orgy」(2012年、Trans Arts Tokyo) 山縣氏による創作物語の一場面をマネキンで表現した展示風景。中央にはファッションデザイナーとなったアダムが神様としてまつられている。

物語で今昔をつなぐ

小澤 山縣さんはファッションの歴史をどのようにとらえ、創作していますか?

山縣 キリスト教の聖書では、葉で性器を隠したアダムとイブが登場します。リンゴを食べ、恥ずかしさから体を隠すという、神に背く最初の行動に、装うことが描かれる。今でも「装い」や「ファッション」という言葉には様々な含みがあり、単に服装を指すわけではありません。人の装い、街の装い、さらに都市や国、地球や宇宙、「時」の装いまで想像できる。逆に、皮膚や遺伝子、DNAなど原子レベルの装いも語ることができると僕は考えます。

小澤 つまり、社会や国、体つきやその体が生まれ育った風土までファッションにかかわってくるのですね。

リトゥンアフターワーズ「Adam Urashima 2013 $$ Bye Buy」(2012年、宮下公園) アダムとイブを主人公にした創作物語を服に投影した。
リトゥンアフターワーズ「THE SEVEN GODS -clothes from chaos-」(2012年、宮下公園) 服の神様「七服神」をイメージした作品。動物のぬいぐるみや野菜や果物の模型で華やかに装飾した。

山縣 はい。また、ファッション史は産業史でもあります。機械で最初にできたのは紡績機で、さらにジャカード織機がコンピューターの原型になったとも言われます。その歴史を僕なりに解釈して一連の作品にし、展覧会やファッションショーで発表しました。僕の創作はいつも、まず物語が生まれて作品になっていきます。

小澤 ファッション史をどんな物語で表現したのでしょうか。

山縣 アダムとイブの話を主軸に経済やお金をテーマにし、鶴の恩返しや浦島太郎、ドラゴンボールなど様々な要素を盛り込みました。アダムが究極のファッションを求めて旅に出て、その死後に服の神様「七服神」が降臨するという物語です。日本をはじめ先進国では繊維産業が衰退しているけど、やはり、人間にとって価値のある大切なものではないか、という思いを込めました。

リトゥンアフターワーズ「new world order -動物たちの恩返し-」(2011年) 東京オペラシティギャラリーでの展示作品。動物たちが布でゼロ円の紙幣を作っているという設定で、布が持つ市場価値を問いかける。

加速する創造の現場

小澤 現在のファッション市場は、シャネルなど高級ブランドのオートクチュールと、H&Mやユニクロなどのファストファッションとで二極化しているように見えます。

リトゥンアフターワーズ「0 リトゥン紙幣」 山縣氏によるゼロ円紙幣のデザイン画。よく見ると「猫に小判」「見ざる、聞かざる、言わざる」などが描かれている。この図案を元にしたジャカード織の作品も発表した。

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