働き方変えてみました 全員参加で「残業ゼロ」

全社員が毎朝まずやるのは、その日の予定を15分刻みで書き出し、同じ部署のメンバーに送る「朝メール」だ。退社時には一日の成果と計画通りできなかった原因などを書いた「夜メール」を送る。その上で、残業する社員には紫色に黄色い星の柄の「残業マント」を羽織って仕事をするお仕置きも用意している。

やむを得ず残業する社員は派手な「残業マント」を羽織らなければならない(東京都中央区のセントワークス)

入社6年目の中村幸恵さん(37)は「1つひとつの業務にどれぐらい時間がかかるか分かるようになり、効率よく仕事ができるようになった」と話す。2年前は社員の25%が月45時間以上の残業をしていたが今は10%程度まで減ったという。

ただ、手掛ける事業が多岐にわたったり、5000人以上の社員を抱えたりするような大企業の場合、一律の残業削減には難しい面がある。事業部門ごとに残業削減を競わせたある機械メーカーの人事担当者は「残業ゼロを達成した部門に『余裕があるならこれもやって』と別の業務が割り振られ、かえって仕事の負荷が重くなった」と漏らす。

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ならば、残業削減をあえて前面に出さず、個々の社員が成果を最大限に出せるように自分の仕事の進め方を計画できるようにする。日産自動車はその道を選んだ。

ポイントは「キンタナ(金棚)」と柔軟な在宅勤務制度。キンタナは毎週金曜の棚卸しのことで、「社員一人ひとりが翌週の業務計画と成果の見通しを上司と相談して決め、チームで全員の状態が把握できるようにしている」とダイバーシティディベロップメントオフィスの桜井香織主任は説明する。

今年1月からは月1回までだった在宅勤務の利用上限を月5回に拡大。キンタナをしている社員は、上司に伝えれば翌日30分単位で在宅勤務をすることができる。

電気自動車を生産する追浜工場(神奈川県横須賀市)で原価低減に取り組む園辺聖芳さん(35)は月に1日程度、在宅勤務をしている。生産現場の車両や部品、設備などを確認・検証する業務は工場でしかできないが、データを資料にまとめる業務は「1人で集中できる在宅の方が成果が出せる場合もある」と話す。往復5時間の通勤時間を仕事に生かせるし、家族と一緒に食事もできるようになった。

時間ではなく成果で評価する労働規制の見直しが議論されているが、人事労務管理に詳しい九州大学大学院の遠藤雄二准教授は「残業代ゼロの是非ではなく、残業が発生しないように業務の進め方や働き方を見直す取り組みに目を向けることが重要だ」と指摘している。

(編集委員 阿部奈美)

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