高級ブランドの5万円Tシャツに負ける気がしない
「ラグジュアリーブランドでも最近、Tシャツが増えています。5万円するものだってある。この5万円のブランドTシャツと、1500円、990円のUTを比べて、まったく負ける気がしません。ものとして絶対にUTの方がいいという自信がある。本来の姿のTシャツをありえない値段で作れるのですから」
――でも、コスト面での縛りはどこかで壁になりませんか。
「むしろ、上代の縛りがあるからこそ、いいクリエーションができる。(いくらでもコストをかけられる)自由演技だから質が高いデザインができるか、というとそうではありません。価格という規制の中でみなが知恵を出し合い、いいものを作ろう、となったほうが、ものとして完成度が高いかもしれない」
「UTというプロジェクトは僕にとって挑戦です。世界中にお客さんがいますから、僕の色をあまり出さず、万人が『面白い』『いいね』と思ってくれるものを意識しています。僕はデザインチームやPRチームなどのリーダー、野球における監督のポジション。週に何度も打ち合わせを重ねる中で、たとえばコンテンツを決める際、新しい僕の意見を入れ、変えていくために何ができるかを話し合う。自分がいいと思うものと他人がいいと思うものは違います。『これ5回洗ってみたけどどうかな』とスタッフに聞くと、自分としてはちょうどいい丈であっても、『1~2センチ長い方がいい』という声が出て修正していく。それが、UTのやり方。僕のコレクションを作るのではないのですから」
UTはもっといいものが作れるはず
――UTにこれまで足りなかったことは何でしょう。
「外部の仕事をこれほどのスケールでやったことはありません。どんなスタッフが働いているのかな、と興味がありましたが、期待以上。『ディズニーの絵柄はこうレイアウトして、基本パターンを作ってみてください』というと、次のミーティングで僕が思いもつかなかったものができあがってきます。ただ、価格などの規制の中でクリエートしていくので、『これはできないだろう』と初めから提案してこない場合がある。売れなきゃいけない、という緊張感がありますから。でも、できないと思わずどんどん提案して製品化する工夫を皆でしたい。もっといいものが作れるはずです」
「ユニクロという船は大きい。いま、大きな船に乗って、見たことのない風景を見ている。すごくラッキーです。20年ファッションをやってきて、ここから柳井さんの年齢になるまであと20年。まねできないことばかりですが、柳井さんから少しでも何かを学び取りたいと思っています」
(聞き手は生活情報部次長 松本和佳)