2014/5/6

結局、大きなブライダル会社に入社した。「自分の大事な人が同じ日、同じ時間、同じ場所に集まるのは結婚式しかない。親への感謝が伝えられる場でもあり、人生一番のイベントに関わるのは、究極のサービス業と感じた」からだ。

しかし、2年半で辞める。マイクにリボンをつけるだけで1000円、赤いバージンロードを引くのは5万円と、なるべくオプションをつけさせる営業を強いられた。そのくせ、社員総会には花火をあげたりして派手にお金をつぎこむ。「お客様思いじゃない」と違和感を感じた。

いったん名古屋に戻った後、また東京に出てきて昨年、別のブライダル会社に転職。従業員10人ほどの小さな会社だが、大学時代にインターンをしたつてで誘われた。

ビリギャル 小林さやかさん

最近、3月に結婚式をしたカップルから、新郎の誕生日のサプライズで来て下さいと呼ばれ、自宅にお邪魔した。前の会社でお世話した人で、今でもつながっている例も多い。「いい式が開けた証拠かなと思う。お客様とここまで深い付き合いができる仕事はなかなかない」。お客さんからの感想で最もうれしいのは、「あなたで良かった」のひと言だ。小さな会社だからこそ、自分を見てくれる人がいると感じる。

昨年末に自らの物語が出版され、大きな反響を呼んでいることについて、「母が私の可能性を信じたように、子どもを信じることでどこにでもある親子関係がうまくいくきっかけになってくれれば」と話す。父の態度も変わり、さやかさんのことを認め、意見も聴いてくれるようになったという。

「ネットで本の感想を読むと、私も頑張ってみよう、とか前向きなメッセージが多くて、それを見ていると泣けてきます。今の私は、こんなに言ってもらえるほど、頑張っているのかな、と。自分も負けないように頑張らなくちゃと思います」

「あのビリギャルだった小林さやか」が、「あの小林さやかはビリギャルだった」と言われるようになれば、それこそ、できすぎの物語として完結するのだろう。

(編集委員 摂待卓)