地下が見える マンホールの蓋の読解法編集委員 小林明

1位 なぜか「東京」がない「帝大」(東大・本郷キャンパス)

マンホールの蓋の愛好家の間で「パイオニア」と仰がれている人がいる。イラストレーターの林丈二さん。林さんは、画家の赤瀬川原平さん、建築家の藤森照信さんらと1986年に「路上観察学会」を立ち上げた著名文化人だ。

70年にマンホールの蓋に興味を持ってから写真の収集・研究を始めて、様々な写真集や書籍などを発行。さらに珍しい蓋を求めて欧米にも足を伸ばしたことがある筋金入りのマニアだ。「今までにざっと3万枚近くの蓋は見てきた」と事もなげに言う。

2位 「下水人孔大正二年」(京都、路上観察学会で)

読者の皆さんにマンホールの蓋の魅力の一端を紹介するため、ここで林さんに「これぞお宝だ」という決定版を独断で6つ選んでもらった(いずれも写真は林さん提供。すでに現地にないものもある)。

東京がない「帝大」、「荒玉水道」に歴史

1位に選んだのは「帝大」。東京・本郷の東京大学キャンパス内にあるマンホールの蓋で、中学生の時、家庭教師だった東大生に教えてもらった記憶があるという思い出の深い品だ。「凹凸が少なく滑りやすい蓋。字体やデザインに時代を感じる」。注目したいのは「帝

3位 歴史の面白さ教わった「荒玉水道」(東京・北区)

大」という表記。なぜか「東京」が抜けている。「もしかすると京都帝大ができる以前のものかもしれない」

2位は京都の「下水人孔大正二年」。これは「路上観察学会」のメンバーと一緒に京都を訪れた際、府庁の近くで見つけたもの。「四角いポチポチがなんとも米国風。デザインした人は米国留学の経験があるのでは?」。3位は東京・北区の「荒玉水道」。「荒玉水道ってなんだ?」と不思議に思い、すぐに図書館に行って調べてみた。すると、関東大震災で東京市外に移住した住民を受け入れた関係町村が設立したのが「荒玉水道」だということを知る。「マンホールの蓋の陰に歴史が隠れているということを教えてくれた。僕にとっての記念碑」と振り返る。

日本最古の蓋? 星のミステリーも

4位 日本最古の鉄蓋?「神田下水」(東京・神田)

4位は東京・神田の「神田下水」。「鋳鉄製格子形」の蓋がおそらくこれ。何度か探索し、ちょっとした裏通りで見つけた。「デザインは素朴で何の変哲もないが、日本最古の鉄製マンホールの蓋だともいわれている代物」。すごいお宝だ。

5位は東京・亀戸で見つけた「水準点」。すり減った鉄の感じがいい雰囲気を醸し出しているが、興味が沸いたのはデザインのバタ臭さ。「星の数が尋常じゃない。陸軍関係の蓋には星が1、2個付いているものもあるが、これほど多いのは見たことがない。星条旗みたい

5位 尋常じゃない数の星「水準点」(東京・亀戸)

で米国の影響も感じられる。ただ、時代性を考えるとそれも信じがたい……」。謎は深まるばかりだ。

6位は長崎市内の観光通りで見かけた「六角星」。「そもそも長崎には星をあしらった蓋が多いが五角星ばかり。六角星は極めて珍しい。何を意味するのだろうか? 籠目(かごめ)文様か、イスラエル国旗にも使われているダビデの星か。西洋では魔よけとして使われていたから、それに関係しているのかも」と空想は尽きない。

歴史を感じさせるマンホールの蓋には古銭のような

6位 籠目?ダビデの星?謎の「六角星」(長崎市)

味わいがある。それも大きな魅力だ。

ただ林さんは懸念している。03年にマンホールの蓋の耐用年数の目安が、車道部で15年、その他で30年に設定されたからだ。「安全上、やむを得ないが、急いで収集しないと古い蓋がどんどんなくなる」と複雑な心境だ。

最近では古い蓋ばかりでなく、新しい蓋の人気も高まっている。

80年代ごろから、国内の各自治体が独自にデザインしたカラフルなマンホールの蓋を相次いで設置し始めた。植物、動物、風景、建物、工芸品、スポーツから漫画まで種類は様々。これらの写真を収集したり、研究したりするマニアも増えている。

このように、マンホールの蓋は人それぞれの視点やテーマに応じて多様な楽しみ方がある。

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
次のページ
1位東京は99%、最下位徳島は16%
エンタメ!連載記事一覧